35社の株式を迷惑メールの株価操作で一時売買停止・米SECが断行
2007年03月10日 11:30
【Herald Tribune】などが報じたところによると、【SEC(米証券取引委員会、U.S. Securities and Exchange Commission)】は3月8日、スパムメールを用いた株価操作の標的になっているとし、35社の株式の売買を3月21日までの10営業日の間停止すると発表した(【発表リリース】)。今回のSECの措置による損失額は数千万ドルにのぼるとする試算もある。また、スパムメールがらみのSECによる措置としては最大規模の売買停止処分。さらにSECでは今後も調査を続け、逮捕者が出るだろうともしている。
スポンサードリンク
元記事やリリースによると、この半年の間すべてのメールのうちの9割以上がスパムメールで占められており、その中でも今回の対象となった「株の買いあおりスパムメール」は3割にものぼるという。
買いあおりのスパムメールを送るグループは、シェアの小さい銘柄をターゲットとする。あらかじめ大量の株式を購入しておきスパムメールを発信。内容は「極秘情報」「ストロングバイ(猛烈な買い推奨)」「今は0.04ドルだが一週間以内に0.5ドルにまで跳ね上がる!」という感じのあおりを適当な理由と共に述べて購入をあおるもの。
スパムメール2例。このようにグラフィックに埋め込まれた文字で株式購入をあおる。本来のテキスト部分ではフィルターをかわすため普通の文章や、無意味な文字列が並べられる。
メールにあおられて株式を購入する人が相次いで株価が上がると、グループはすかさず手持ち株式を売却して利益を得る。あおられたメール受信者はたいていにおいて、株価が下落するのを目の当たりにすることになる。
SECによればこのような「買いあおりスパムメール」は毎週1億通も送られ、結果として個人投資家に数億ドルもの損失をもたらしたとしている。「スパムメールがメールボックスをゴメ溜めにする」「投資家らの利益を損なうこのような行為は不法であり、問題である」とSEC委員長のChristopher Cox氏は述べた。そしてSECは今回のような責任ある行動をすることで、個人投資家の権利を守ると断言している。
一方このスパム買いあおり作戦のターゲットとなった会社自身も、SECから疑いをかけられており、一部には反発する向きもある。いわく「なぜ罪もない我々を疑うのか、彼らはスパマーを糾弾すべきだ」。一方SECでは停止対象となった35社が、スパム行為に関与したかどうかについては言及していない。
SECのページには【具体的な対象スパムメールの例がいくつも提示されている(PDF)】が、当方(不破)のメアドにも類似のタイプはここ数か月の間何通も、それこそ毎日数通のペースで届いている。メーラーのスパムフィルターにかからないように、通常の文字列をテキストベースで貼って肝心の株買いあおり文章はグラフィックで掲載したり、グラフィック内に埋め込まれた文字列を判断するフィルターが出るとみるや、背景をグラフィカルにしたり文字列そのものを斜めにしたりうねらせたりしてフィルターから逃れようとするなど、いたちごっこ状態が続いている。このような技術と誠意と努力をもっと別の方向に使えばいいのに、と思っていたが、SECが動いたことで今後は縮小の方向に向かう(か、また別の手段が用いられる)ことだろう。
日本国内では幸いにもまだこのタイプのスパムメールはほとんど見られない。が、仕組みは非常に簡単であり誰にでも容易に可能であることから、そう遠くないうちに類似のスパムメールが登場するものと思われる。今件では1株数セントという小型銘柄がターゲットになったが、日本の株式市場でも1売買単位が数百円のものや、一日の取引高が数十単位に過ぎないという閑散な銘柄は多く存在するため、ターゲットを選ぶのもそう難しくはないだろう。
アメリカのSECと比べると対応が遅い、腰が重いといわれている日本の証券取引等監視委員会。最近では色々がんばっているようだが、仮に今回のようなスパムメールによる「株価操作」が生じた際にどのような対応がなされるのか。杞憂かもしれないが、心配でもある。
スポンサードリンク
ツイート