新型インフルエンザ考察番外編・関連銘柄を考察する

2007年02月18日 19:30

株式イメージ先に【新型インフルエンザへの食料品など家庭備蓄品を考察する】などで考察をした、鳥インフルエンザから発現しうる「ヒトからヒトへ感染する」タイプの新型インフルエンザ。当サイトは「株式投資を中心に」といううたい文句を語っていることもあるので、実際に「パンデミック」(爆発的流行)状態となった場合、どのような銘柄に動きがあるのかを考察してみることにする。

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この「新型インフルエンザで動く銘柄」への考察はさほど難しくはない。通常のインフルエンザで影響のある銘柄に、「新型インフルエンザ(とそれに伴う関係機関)で影響のある銘柄」を足していけばよいだけの話。

プラスにしてもマイナスにしても、「新型インフルエンザによる社会現象、動向で業績が直接左右する」ものと、「市場関係者に『影響がある』と推測されて売り買いされる」の2タイプに大きく分かれる。しかしどちらを要因としても、結論としては「上がるか下がるか」の一つでしかなく、理由が「実業績によるもの」か「市場関係者の思惑によるもの」かはさほど重要ではない。ここが投資の難しいところであり、同時に面白いところでもある。

1)ネガティブに働くだろう銘柄

「新型インフルエンザ」の発現とその流行、パンデミック化でネガティブに働くだろう銘柄としては……とここまで書いて考えた。具体的銘柄を挙げると問題が発生しうる。ということで、この項目ではセクターレベルでの表現にとどめておくことにする。

1)外食産業・レジャー産業
外出禁止令が日本の法令上施行しうるのかどうかという問題はあるが、実際にはそれに近い措置が取られることだろう。周囲の人にも入院したり自宅安静を強いられる人も出てくるだろうし、とてもではないが外で食事をしたり遊びにいくなどということは出来なくなる。例えるなら今年のように、暖冬でスキー産業が大変な状況にあるのと同じようなものだ。

短期間で事態が解消の方向に向かえば影響は最小限に留まるし、沈静化した後の反発も喜ばしいものがあるが、それまでは売り上げの急落は避けられまい。

2)卵関連産業
これは意外かもしれないが、ワクチンを精製する際には媒介となる鶏卵が大量に必要となる。先に(一般の)インフルエンザワクチンが必要になった際にも卵が不足して問題となったが、仮に新型インフルエンザが流行してそのワクチンが開発され、量産化を求められたとなれば、需要量はこれまでの比ではない。卵は生ものであるから蓄積保存が難しく、同時に重要度を考慮すると、ワクチン精製に生産量のほぼ全力が傾注される可能性すらありうる。

と、なれば日常卵を使っている業種には卵不足が生じることになる。「少しの間卵を食べなくとも死ぬことはないだろう」というわけだ。業界からすれば生命線を切られるような話だが。

具体的には卵の卸業者、卵を使う菓子類が該当する。

3)保険産業
パンデミック化で病に倒れるだけならともかく、帰らぬ人になる場合も少なくない。当然保険金の支払いも急増し、「業績が悪化するのでは」と推測する人も増えるだろう。ただ、保険契約上は(ほぼすべてにおいて)「戦争その他の状況によっては保険金などを支払わない場合があります」という但し書きが添えられている。今件がこれに該当するかどうかは状況次第だが、場合によっては一部適用される場合もあるだろう(ちなみに阪神大震災の時にはすべて支払われたという話である)

4)交通産業
外出する一般人が極端に減ることが予想されるので、当然利用者も少なくなり、売り上げも落ちる(と推定する人が増える)。ただ、鉄道などの公共機関は政府の指示により、インフラの体制維持のために優先的に運営されるだろうことも付け加えておく。

2)ポジティブに働くだろう銘柄

つづいて「新型インフルエンザ」の流行がポジティブに働くだろう銘柄。そのうちのいくつかの具体例をも含めてセクター単位で説明。ただ、すでに今件を見越して買い進まれている銘柄も多いし、いざ実際にということになってもまったく無反応どころか「そこが天井」ということで売り込まれる可能性もある。

1)マスク関連
直接マスクを販売するところや、連想買いとして買われるところなど。鳥インフルエンザが流行した際に上がった銘柄としては【重松製作所(7980)】【興研(7863)】などが有名。ただしこれらのメーカーが生産するマスクが直接需要増加となるかどうかは分からない。むしろ「マスク? 重松だ!」という連想買いによる上昇がありうる。むしろ【ダイワボウ(3107)】【興和紡績(3117)】【バイリーン(3514)】【小津産業(7487)】【ユニチャーム(8113)】などの方が現場に近い。

2)医薬品・殺菌関連
どのような形・性質のものが発現するか不明なので特定はできないが、現在鳥が感染している鳥インフルエンザは、殺菌が効くとされている。先の家庭用備蓄品の記事中にも、殺菌関係の薬品が含まれているのも、清潔にすることによる効果が期待できるからだ。

具体的銘柄とすれば【明治製菓(2202)】だろうか。医療関係の布として【ホギメディカル(3593)】あたりも該当するかもしれない。

3)臨床検査、検査薬関連
一斉に広まった場合には細かい臨床検査をしている余裕はあまりないかもしれない。むしろ簡単な検査薬が(ワクチンと共に)開発され、量産化されて医療現場に配給されるはずだ。それを考えると【みらかホールディングス(4544)】【栄研化学(4549)】【日水製薬(4550)】【ビーエムエル(4694)】あたりが連想される。

4)ワクチン・対抗薬関連
これはすでに何度と無く報じているように、タミフルの国内販売権を所有している【中外製薬(4519)】、先日【鳥インフルエンザにも効果のある治療薬、富山化学工業(4518)が初の臨床試験開始】と報じられた【富山化学工業(4518)】を筆頭に挙げておく。他に、緊急事態として他の製薬会社にも動員がかかる可能性を考えると(あるいは連想買いから)【武田薬品工業(4502)】あたりも買い進まれるかもしれない。

5)室内娯楽関係
事実上の外出禁止令が発動されるとなると、自宅内での娯楽に時間を費やす人が増えるため、レンタルビデオなどが活性化される(年号が変わり自粛ムードに日本が覆われた時にも同様の現象が起きている)。また、昨今ではネットワークゲームやインターネットへのアクセス頻度も増えるため、そのセクターの銘柄が連想買いされることだろう。【USEN(4842)】をはじめとしたコンテンツプロバイダやインターネットプロバイダ、【東映アニメーション(4816)】などのアニメ、ビデオ関連銘柄が注目されると思われる。

6)冷凍・レトルト食品関係
家庭内備蓄品への需要が高まるため、関連銘柄の売り上げが増え、注目も集まる。冷蔵庫の大きさを急に増やすわけにはいかないので、冷凍食品よりもレトルト系のモノが好まれるかもしれない。【加ト吉(2873)】【ヱスビー食品(2805)】【ハウス食品(2810)】、あとはそれらの梱包を手がけている【大成ラミック(4994)】あたりだろうか。


当方(不破)が経験した「市場取引の中断」として一番印象深いのは、ライブドア・マネックスショックにおける東証のオーバーフローによる停止処理。システムトラブル以外の、外部的要因を元にした取引停止との遭遇は昨今ではこれくらいだ。くだんの「9.11.」の時も、大幅に株価は下落したが状況の特異さをもって売買停止処分が行われることはなかった(下落幅も「それほど」大きくはなかった。1987年10月のブラックマンデーによる下落、1日で日経平均にして14.9%・3836.48円の値下がりと比べれば大したものではない)。

関連機関による新型インフルエンザの流行宣言がなされたところで、東証などの取引所における取引が停止することは基本的にありえない。むしろ、さまざまな思惑が絡んで取引が急増する可能性すらある。仮に今回想定したような状況に至ったとしても、冷静な判断のもとに投資をするよう心がけよう。パニックによる売り買いは、それこそプロや機関投資家の餌食になる可能性すらあるのだから。

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