農林水産省が野菜廃棄で「もったいない」対策委員会開催・対策アイディアをネットなどで募集開始
2007年02月17日 12:00
先に【農水省がキャベツや白菜「もったいない」・委員会開催で対策検討】で報じたように、キャベツや白菜の作りすぎで大量に捨てられたことを受けて、生産過剰となった野菜の有効活用策を緊急に検討する会議が【農林水産省】の主催により2月15日に行われた(第1回野菜の緊急需給調整手法に関する検討委員会の議事概要、PDF)。参加した委員からはさまざまな意見が提示され、また今後世間一般から広くアイディアを募集することも正式に決定し、その募集がスタートした(【発表リリース】)。
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すでにテレビや新聞などで報じられ、実際の店頭などで体感している人も多いだろうが、野菜のうち特にキャベツや白菜は、去年の秋以降に気温の高い日が続いたため出荷量が増えて価格が急落。野菜の収穫量は天候に左右されやすく、生産された量をそのまま出荷したのでは市場価格が暴落する恐れがあることから、農水省では野菜が出来すぎた場合に廃棄した農家に補助金を払って価格を調整する制度を設けている。
ところが去年の秋以降廃棄された野菜はあわせて2万2000トン。結果として「野菜(と補助金)がもったいない」という批判が農水省に多数寄せられることになった。そこで農水省では率先して今回の委員会開催を通し、出来すぎた野菜の有効活用策を検討することになった。
第一回委員会では次のような意見が出された。
・産地廃棄はもったいない。産地廃棄で価格を安定させるのは納得がいかない。
・緊急需給調整の効果を評価しているのか。
・もったいないという心情は理解できるが、それぞれの立場で自分にできることはないかと考えて行動している方は少ないのではないか。
・農業は自然相手であり、今考えられる知恵ではどうしようもない場合もあることを学ぶべきではないか。
・産地としては、廃棄に至る前に価格回復の努力をいろいろ行っているが、どうにもならない時の最後の手段として廃棄は絶対に必要な手段
・消費地に一定量は供給しなければならない野菜産地にとって、緊急需給調整は安値時の必要な制度。
・豊作時は価格が安すぎて生産原価も賄えず、損してまで出荷するのは耐え難い。農業後継者が減少する中、こうした状況が続くと、農業志望者がますます減ってしまう。
・計画的な生産や産地廃棄以外の対策もある上で、最後の手段として産地廃棄があるという需給調整の仕組みの全体像が国民に伝わっておらず、産地廃棄のみが一人歩きしているので、全体像を国民にきちんと理解してもらうことが大事。
・産地廃棄は、なぜこういうことが起きてしまうのか理解し、自分がどう生きるべきか考える良い食育の教材でもある。食育のイベントや事業の中で事実を知ってもらい、もっと食べようと宣伝もできるのではないか。
・消費者が一定の価格で買わなければ生産者も生きていけないということに理解をして欲しい。それには多くできた時にはしっかり食べて頂くこと。消費者と生産者がもっとお互いを理解し合って行動することが重要。
・産地廃棄に至る前に、消費者向けに「もっと野菜を食べようキャンペーン」やレシピ提供をするなど仕組みを工夫し、消費者にも需給調整の過程に参加してもらうことが必要。
・長期保存に向く加工に伴うリスクに対して国の支援があれば需要の拡大につなげられるのではないか。
・加工では、コスト・品質・安全性などを見極めて原料を仕入れているので、野菜が余っているからといって急に受け入れるのは難しい。
・増やすべき需要者を人間だけで捉えず、家畜飼料等での利用も考えるべき。
・保存や一時保管などの手法にも目を向けるべき。
まさに多種多彩な意見が提示されたがまとめると「確かにもったいないし農家のモチベーションも下がる」「でも野菜を捨てる事態そのものは仕方がない面もあり、むしろ知恵でもある。非難するのも問題だ」「野菜の供給と流通についてもっと知ってもらう必要がある」「野菜の需要増加の仕組みが必要」「出荷野菜の調整の仕組みも必要」ということになるだろうか。「自然が相手なんだからどうしようもないじゃん」とあきらめムードの意見がある一方、「それでも知恵を凝らして工夫をすべきだ」と積極的な意見もあり、すくわれる(誰がどの発言をしたかは後日公開の議事録に掲載される予定)。
今回の委員会は「第一回」と銘打っており、今後野菜の生産過剰や、逆に極端に生産量が少なくなって高騰した際には再び開催されることが予想される。
また委員会では2月23日を締め切りとし、電子メールや【入力フォーム】、郵送、ファックスなどで「野菜廃棄に対する効果的なアイディア」を募集している。23日以降も恒久的に募集すべきような話ではあるが、ともあれこのような形で窓口が開かれたことは評価に値する。これまで寄せられた意見と、その意見に対する問題点(例えば「無料で配るべき」という意見には「需要が伸びず野菜価格の回復には貢献しない」「費用は誰が負担するのか」という問題・解決すべき点がある、など。主に費用面での問題解決がポイントとなる)も【掲載されている(PDF)】ので参考にするとよいだろう。
「素人のアイディアなど必要ないだろう」という考えもある。が、その筋の専門家以外、つまり門外漢な意見やアイディアは、まったく別の視点から物事を見ることになるので、これまでにない新しい発想が用いられるため、時として素晴らしい方策を導き出すことができる。
もし「こんなものはどうだろうか」というアイディアがあれば、ぜひ上記フォームなどから応募してみてはいかがだろうか。
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