血液一滴あれば薬の効用判明! 理化学研究所「SMAP法」開発

2007年02月20日 19:30

医療イメージ【理化学研究所】は2月19日、同研究所と理研ベンチャーの【ダナフォーム】を中心とする研究グループが、一滴の血液から簡単に薬の副作用や遺伝子のパターンを判断する、新しい遺伝子診断技術「SMAP法」を開発したと発表した(【発表リリース】)。これまで大規模な設備と長い時間がかかっていた遺伝子検査が簡単に出来る仕組みが確立されたことにより、患者の体質によって服用する薬の種類や量を変更するなどの治療形式を変える「オーダーメイド医療」が現実のものとなるとして期待と注目を集めている。

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詳細はリリースなどに目を通して欲しいが、理化学研究所らのグループが開発したのは簡単にまとめると「特定の遺伝子と反応して(その遺伝子だけが増えて)見た目ですぐに分かる試薬」。一滴の血液を用いて装置で30分ほど温めるだけで、対象の遺伝子(情報)かどうかが判断できる。

これまで特定の遺伝子に該当するかどうかを調べるには、遺伝子そのものを抽出して精製する必要があり、これには専門の設備と長い時間(半日程度)を必要とした。しかし今回開発されたSMAP法でなら、(調べたい遺伝子それぞれの試薬が必要になるが)簡単な設備と道具だけで30分の短時間で確認することができる。この方法のメリットとしてリリースでは

1)短時間で診断
2)さまざまな遺伝子診断にも応用可能
理論上すべての遺伝子について検査が可能
3)省エネ型技術
冷却装置などを必要としない。将来的には個人診断用の「携帯電話接続型マイクロカード」の作成も可能
4)操作が簡便
5)精度が高い
6)サンプルは微量
7)研究支援
試薬作成ソフトは無料公開されている
8)将来性
将来は携帯電話もしくは携帯電話サイズの超小型で安価な装置で診断が可能に


などのポイントを挙げている。

「携帯電話接続型マイクロカード」については詳細が別項目で説明されている(「個人診断用の携帯電話接続型マイクロカード作成などによる超小型化、さらに、検査結果データの通信をかねて携帯電話接続型も可能となると考えられます」)とあるが、専門家ではない当方には「これだ」という確定的な理解ができないのが残念。検査結果をアダプターか何かで携帯電話に送信するタイプのアタッチメントレベルでの機器の開発すら可能になる、ということだろうか。最近では画びょうの針のようなものを指にチクっと指すだけで血糖値が分かる医療機器があるが、構想されているのはそれに似たようなものなのかもしれない。

なお【「オーダーメイド治療」(オーダーメイド医療実現化プロジェクト)】とは現在文部科学省などが進めている医療プロジェクトで、薬の副作用や効用と遺伝子の関係をデータベース化して効率的な治療体制の確立を目指すというもの。要は「同じ病気でも遺伝子パターンで薬の効き方や副作用の度合が異なる。それなら遺伝子パターンと病状、薬の効果や副作用を片っ端からデータベースとして納めて検索可能とし、類似・同一パターンの病人に最適な薬の処方や分量の指示ができるようにしよう」というものだ。

このプロジェクトではこれまで、例えデータベースが構築できたとしても、いざそれを使って新たな患者のパターン認識と検索をしようとしたときに、その患者の遺伝子パターンを確認するのに時間と手間と施設が必要とされるという問題点があった。しかし今回SMAP法が確立されたことで、この大きなハードルがクリアできる見通しが立ったことになる。

これからさらなる検証と試薬の多様化が必要だが、今後の研究の進展に大いに期待したいところだ。

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