中身もたっぷり「250円弁当」が好調な理由

2007年02月08日 08:00

お弁当イメージasahi.comに気になる見出しが躍っていた。【250円弁当活況、独立の夢実現 京都】というものだ。今日びコンビニでも中食の弁当屋でもお弁当は500円が平均相場というもの。ちょっと色をつけたり、出前モノになると+数百円はざら。そんな世知辛い(?)時代に250円のお弁当があるのだという。気になる見出しに引き寄せられ、つい中身をじっくりと読んでみた。

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やれデフレ経済、格差社会という言葉が常套句化される中で、「安くても良いもの、お手軽でしっかりしたもの」を食品に求めようという動きがあちこちで見受けられる。ライバルとの区別化をはかるため「極力安く、極力良いものを(そしてもちろん利益もしっかりと)」というある意味当たり前の、商売の原則を守ろうという動きだ。先に【口休めに最適!? 1個10円の「10円まんじゅう」が売れているという話】でも挙げた、10円まんじゅうを販売している各店舗も「安かろう悪かろうではなく、10円という安価でもムダを極力省いてしっかりした商品を提供」をコンセプトに売り上げを伸ばし、規模を拡大している。実際注文して食べてみたが(【10円まんじゅう(夢菓蔵)】参照)、確かにこれが1つ10円なら人気が出て当然と、その魅力をおまんじゅうと共にかめしめた。

元記事に掲載されていた「250円弁当」は京都府の「250円弁当元気や」というお店によるもの。残念ながら公式サイトがないのでお店の主張・アピールは分からなかったが、ネットで検索した限りでは実際に食べた人の感想もほぼ肯定的なものばかり。記事に掲載されている写真を見ても、ごく普通のコンビニ弁当・総菜屋の弁当と同じようにみえる。

「250円弁当」というと、よくうどん・ソバ屋のサイドメニューや小食のOL向けとしてお弁当屋が用意した「半人前のミニサイズ弁当」を想像するが、この「250円弁当元気や」の「250円弁当」は通常の大きさをしているという。「チキンカツは大人の手より大きいくらいだ」という表現からもそれが分かる。

勝手にピックアップするわけにはいかないし、当方(不破)の近所に店舗がないので実調査ができずお弁当の写真を掲載することは出来ないが、【検索エンジンのイメージ検索】で見た限りでは、「本当にこれが250円!?」とびっくりさせられるレパートリーとボリュームだ(写真では味までは分からないのでコメントできないが)。500円の値札を付けて売り出しても、普通に売れるよな……とすら思う。

通常ならどう考えても「赤が出る」価格設定だが、ディスカウント店から安く材料を仕入れたり調理の下ごしらえを一か所でまとめるなどして経費を減らしてこの価格を実現したという。「250円弁当元気や」はお昼時には行列が出来るほどの盛況ぶりで、1日1000食分売れる日もあるほど。現在は京都市内に6店舗を構えるまでになったという。

元記事では他にも、名古屋でのスーパーの「250円弁当」の成功事例や、愛知県での「250円弁当」がスーパーそのものの業績回復に役立った話も掲載されている。また、半月ほど前には同じくasahi.comで【名古屋の250円弁当の話】を中心に、やはり「250円弁当」の活性化の例が紹介されていた。

これらは同一のチェーン店やフランチャイズ展開をしているわけではなく、まったく別々のもの。「安価な弁当」という共通点があるのには違いないが、なぜ皆同じスタイルで同じ250円という価格帯なのか。不思議に思って元記事を最後まで読むと、その謎が解けた。

実はこれらの「250円弁当」、場所や経営者は違えどすべて同じ「仕掛け人」によるものだというのだ。その仕掛け人とは千葉県に事務所を置く経営コンサルタント渡辺一紀氏。渡辺氏の指導で「250円弁当」をはじめた店舗は東北から九州まで全国に十数軒あるとのこと(もっとも価格設定にびびって店舗経営をあきらめたのはそれ以上あるという)。

この渡辺氏、「あきない元気塾」代表で中小企業診断士と商業施設士の資格保有者。早稲田大学理工学部卒業後、大手食品メーカーを経て、商店経営指導センター入社という経歴を持つ、小型店舗のビジネス展開のプロフェッショナル。セミナーも各地で開催しており、あるセミナーでは「非常識経営」を武器に奇想天外商法で繁昌店を続出させている「繁昌店請負人・小型スーパー経営のスペシャリスト」と説明されている。

【広島県で開催された渡辺氏のセミナー】ではその概要として次のような箇条書きが記されている。これだけしか資料がないのだが、箇条書きに目を通すだけでも渡辺氏の小型店舗の展開戦略や、「250円弁当」の設立プロセスが何となくつかみ取れる。

・地域密着戦略の誤り
・品揃えをするな、値頃感を追求せよ
・弱者の商品を狙え
・仕入先の表玄関からではなく裏口から仕入れよ
・80坪で1日460万円売る!アッパレ均一作戦
・通路が狭い、夕方商品が品切れしないなど「不便な店」を目指せ
・スポット商品でその日の商売を組み立てる
・色気があると買う気が起こる
・「250円弁当」1日1600食売る方法


元記事で渡辺氏は「250円弁当」展開について「消費者の高級志向が高まるなか、あえて安売りに挑戦したことが成功に結びついている。ただ、250円といえば家庭で材料を買ってつくるより安い。採算が合うように事業化するのは簡単ではない。事業主のやる気次第だ」と分析している。確かにたとえ1日1000食売れても、売り上げは25万円に過ぎない。そこから材料費や人件費、光熱費や設備投資費、(期限切れなどを考えた上での)ロス分などを差し引いたらどれだけ利益が残るだろうか。

一般のファストフードでよく耳にする「ご一緒にポテトはいかがですか」にあるように、250円弁当以外に利益率の高い商品も一緒に買ってもらうことで売り上げ・利益はある程度調整ができるが、それでも主力商品が250円である以上、並大抵の努力では黒字化するのは難しい気がする。それでも上記の例で「売り上げアップ」「店舗拡大化」という話があるのだから、それらの店では経営が順調に推移しているのだろう。

そういえば先に挙げた「10円まんじゅう」でも担当店員を極力少数に絞り込むことで、おいしいまんじゅうを売り込む店(フランチャイズ店)を急速に増やしつつあることが会社のサイトには書かれていた。事業が楽しいことはもちろんだが、利益が上がって採算が取れるビジネスモデルでなければ店舗拡大などありえないから、十分に商売が成り立っているのだろう。

250円弁当にしても10円まんじゅうにしても、対象となるビジネスは限られるかもしれないが、工夫次第で「安かろう悪かろう」ではなく「安かろう良かろう」そして「儲かろう」というスタイルを確立できるのかもな、と思わせてくれる話といえよう。

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