名簿は「触らぬ神に祟りなし」だから廃棄しろ・個人情報保護法が図書館運営にも影響
2007年01月10日 20:30
[このページ(nhk.or.jp)は掲載が終了しています]が1月9日報じたところによると、個人情報保護法の施行に伴い、多くの図書館で個人の住所・氏名などが書かれた名簿の閲覧制限が実施されていることが明らかになった。さらに書籍の一種であり本来なら収集の対象となるべき名簿そのものを収集対象から除外する動きも広まっているとのこと。
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報道によると、NHKが全国47の市立図書館を調査した結果、名簿類を置いている図書館のうち個人情報保護法が始まってからも名簿の閲覧・複写について利用制限をしていない図書館はわずか16%にとどまっていたという。一方81%の図書館が、市販された名簿(つまり誰でも容易に入手できるもの)についてのみ閲覧を許可するなど、何らかの形で名簿の取り扱いに対する制限を始めていた。
しかし図書館の本来業務の一つである名簿類の収集や保管などについては、47%の図書館が「歴史的な資料として残す必要がある」とし継続収集を続けていたものの、過半数の53%の図書館が「閲覧できない資料を所蔵する必要は無い」とし、名簿の収集自体もひかえ、既存の名簿についても破棄するところすら存在することが明らかとなった。
「使えないものは保有しておく必要はない」という一時期流行った「超整理法」が思い返されるが、資料蓄積性を一義とする図書館としては問題のあるなしについて論議が分かれるところ。図書館情報学が専門の甲南大学の馬場俊明教授はインタビューの中で、「名簿の取り扱いで各図書館が予想以上に自己規制をしている。個人情報保護法への過剰反応ではないか。将来にわたって知る権利を守る図書館の役割が果たせなくなる可能性があると危ぐしている」とコメントしていた。
「現行の」個人情報保護法に対して(非難を恐れて)過敏に反応するのは理解できる。また、「使えないものは取っておく必要は無い」というのも正論だ。しかし、法律とて永遠のものではなく、解釈や法そのものが数年のうちに変更される可能性は十分にある。一方、一度失われた資料は基本的に二度と戻ってくることはない。一時的な状況によって、未来永劫に存続させるべきものを簡単に廃棄してしまうのは、それこそ「自分たちの意に反するから過去の遺跡をすべて破壊する」という行為と同じではないだろうか。あとで悔やむ前に、何らかの手が打たれるべきだろう。
(最終更新:2013/09/14)
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