エタノールの需要急増でとうもろこしなど穀物のニーズ高まり価格高騰へ
2007年01月08日 08:30
アメリカの環境シンクタンクである【アースポリシー(Earth Policy)研究所】は1月4日、原油価格の高騰などで急速に需要が拡大しているバイオエタノールを生産するため、とうもろこしのニーズも急増、2008年にはアメリカ国内生産量の半分ほどがエタノール向けに使われ、食糧向けのものが相当量減らされると指摘した。結果としてとうもろこしをはじめとする穀物の価格が急騰する可能性も示唆している(【発表リリース】)。
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レポートによると2006年末の時点で116のエタノール精製工場がアメリカ国内には存在し、年間5300万トンの穀物を精製してきた。すでに79か所の工場が工事中で、これらの工場が完成すればさらに5100万トンが使われることになる。さらに稼動中の工場の一部は拡大工事中で、この改装がすめば800万トンがさらに原料として使われると試算している。ちなみに変換効率は1トンのとうもろこしで110ガロン(416.4リットル)のバイオエタノールが出来るとのこと。
その上、2006年中に200ほどのエタノール精製工場が建設計画段階にある。この工場がすべて完成してエタノールを精製し始めるとなると、原料として必要になるとうもろこしの量は1億3900万トンにまで増えるという。この大拡張計画によるエタノールの増産で150億ガロンのエタノールが精製され、それはアメリカの自動車燃料需要の6%をサポートすることになる。
一方アメリカは世界のとうもろこしの40%を生産し、世界の輸出量では70%を占めている。アメリカのとうもろこしの輸出量は5500万トンだが、これは全世界の輸出穀物の1/4を占めている。例えばアイオワ州のとうもろこしの生産量だけで、カナダ一国の生産量を超えているほど。このアメリカで大規模なとうもろこしの燃料への変換が行われることは、すなわち輸出量が減らされることに他ならず、つまりは世界への穀物供給量も減ることを意味する。
レポートでは「すでにとうもろこしをはじめとする穀物の価格上昇の影響が出ている。先物取引ではとうもろこしと小麦において、2006年後半でここ10年の間で最高値をつけている」と状況を説明すると共に、
「とうもろこしの価格上昇はシリアルなど直接の材料となる商品だけでなく、とうもろこしを利用して生産されるミルク、卵、チーズ、バター、家禽、豚肉、牛肉、ヨーグルト、およびアイスクリームなどの価格にも影響を与える」
「例え仮にアメリカで生産されるすべてのとうもろこしを燃料に替えても、自動車の燃料需要の16%しか満たさない」
「自動車の25ガロンの燃料タンクを1度満たすのに必要なとうもろこしは、そのまま食糧にした場合には一人を一年間丸まる食べさせるのに相当する量になる」
「自動車の燃費規格を20%かさ上げしたり、電気自動車に切り替えたり、短距離運転を心がけるべきだ」
「食糧事情がひっ迫すると政治の不安定を引き起こし、それは経済の進捗を止め、各国の株式市場をも危うくさせる」
などと述べている。
すでに【オーストラリアでの干ばつ続く、食用油も値上げか】でも報じたように、オーストラリアでも空前の干ばつが続いており、同国の穀物輸出はきわめて難しい、出来ても高値がつくことが予想される。ただでさえ世界的に穀物需要がひっ迫している時に、干ばつ・燃料置換による需要拡大・中国などの急速な工業近代化による需要急増という複数の要因が相次いでいることになる。
今後とうもろこしをはじめとする穀物市場は、色々な意味でホットなものとなるだろう。そして穀物や燃料関係の技術革新が急速に求められるに違いない。
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(最終更新:2013/08/23)
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