【更新】国立国会図書館でウェブサイトの収集本格化へ・立ちはだかる著作権の壁
2007年01月07日 20:15
先に【国会図書館が閉鎖サイトのデータ収集と公開開始】で報じたように【国立国会図書館】では一般書籍同様にインターネット上のウェブサイト(ホームページ)を収集・蓄積する事業を2006年7月10日から正式に「インターネット情報選択的蓄積事業」としてスタートしている。プロジェクト名も【WARP(Web ARchiving Project)】と決まったようだが、そのサイト収集事業が本格化すると共にさまざまな問題点も明らかになってきたという([参考:産経新聞])。
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国立国会図書館には国立国会図書館法に基づき、一般書籍・小冊子・楽譜・地図、さらにはパッケージされた電子出版物に至るまで1部ずつ献本する義務がある。公的書籍はもちろん、民間の出版物もしかり。ところが(当然といえば当然だが)ネット上で公開されたものにはその義務は無い。
紙媒体の不調とコストダウンや読者ニーズの変化から、紙媒体での発行を取りやめ、ネット上での公開に切り替えた雑誌も少なくなく、そのような場合国会図書館での「ストック」が途切れてしまうことになる。
また、学術論文でも参考文献として書籍ではなくネット上の論文などを指定するものが増えているとのこと。そのような論文の場合、URL先のデータを保存しておかないと後々になって「この論文はいったいどんな資料を論拠に書いたのか、URL先のサイトが消えているので分からない」という始末になる。
「書籍のデジタル化」「資料素材」の2点から国会図書館でもサイトデータの保全は急務と認識しているとの話だが、やっかいなのが所定の手続き。元記事によるとそれぞれの収集サイト先・管理責任者に対して「1件1件」「収集許諾依頼文書を送付」し、許諾の回答があったものだけを収集しているという。また、著作権の問題などから個人のサイトの収集・蓄積は難しいとの見解。
以前の記事でも紹介したが、デジタルアーカイブとしては【Wayback Machine】が知られている。画像やフレームの欠損が生じている場合が多いが、それでもかなりのサイトがデータとして保全されている。サイトやドメインの歴史を知る上で貴重な資料である。こちらは検索エンジンの「最新の一つ手前のキャッシュデータ」と同じ解釈で、「著作権上は問題は無いけれども意義のある人は申し立ててくれれば削除しますよ」というスタンスを取っている。
また、国会図書館の悩みの種の一つである「論文などで引用しているリンク先が無くなってしまう」件を解決するために、日本国内でも【ウェブ魚拓】のようなサービスがあり「後ほど文章を読む人がリンク先の記事をチェックし、意味が通じるようにする」手はずを整えることができる。こちらは国会図書館が求めている全文保全ではなく一部なので、著作権法第32条で規定されている「引用」に該当するとの判断がなされている(「引用とは、報道や批評、研究などの目的で、自らの著作物に他の著作物の一部を採録すること。日本では、一定の条件を満たした引用は、著作権を侵害することなく権利者に無許可で行えることが著作権法第32条で規定されている」……ウェブ魚拓説明文より)。なおこちららの場合も正当な権利者からデータの削除を求められればそれに応じると明言している。
今後ますます既存の雑誌を廃刊し、インターネット上に移行する出版社・雑誌は増えるに違いない。それに伴い、「いつのまにかウェブ上の雑誌データが廃刊と共になくなっていた」「雑誌社そのもののサイト移転の際に、昔の雑誌の掲載が取りやめになってしまった」「会社が無くなって、掲載雑誌データが全部失われた」という事態も必ず発生する。
いつでもどこでも誰でもすぐに閲覧できるネット上の情報は、それだからこそわざわざ記録保全している人など滅多にいない。たとえば仮に、「当サイト(Garbagenews.com)の2005年10月1日の時点でのサイトデータを(Wayback Machineなどは使わずに)持っている人、いますか?」と問うた時に、「持っていますよ」と答えられる人はいるだろうか? 恐らく一人として居ないだろう。雑誌などなら保全している人もいるだろうし、現行法では国会図書館に保全されるはずだが、ネット上のデータではそれもありえないというのだから問題だ。
個人や一般法人ならともかく、国立国会図書館は立派な公的機関である。その公的機関における事業なのだから、Wayback Machineやウェブ魚拓とは違い、それこそ大手を振って個人・法人を問わず過去データを取得し保全した上でデータベースとして公開しても問題は無いような気がする。それこそ日本限定版Wayback Machineプロジェクトを遂行するべきだろう。しかし、やはり著作権法上の問題は避けて通れないのだろうか。
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