【更新】アメリカ議会、ネット上の仮想世界へも課税の動き
2007年01月06日 19:00
[産経新聞]は1月4日、アメリカ議会がインターネット上の仮想世界で生み出された利益に課税するための指針作りに動き出していると報じた。上下両院の合同経済院会が1月中にも報告書を公表し、関係省庁が具体的な課税方法などの検討に入る見通しだという。委員会では同時に、仮想世界の活動で生み出された創造物を著作権法で保護する検討も進める方針。これらの動きにより、仮想世界の経済活動にも現実の法律を適用する動きが本格化すると元記事では分析している。
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代表例として挙げられているのが、当サイトでも何度と無く報じている、(いまだに日本語版が公開されずにやきもきしている人も多いであろう)【セカンドライフ】。このゲームでは特に、メーカーサイドがゲーム内通貨「リンデンダラー」を現実のアメリカドルに相互交換できるシステムを採用していることから、経済活動が活性化。多くの企業が広報活動やマーケティングリサーチ、さらには支店活動を行うために「参入」し、かつてのアメリカにおける「開拓時代」「ゴールドラッシュ」さながらの状況を呈している。
2006年11月一か月間にゲーム内で交換されたアメリカドルはゆうに300万ドル(日本円で3億5000万円以上)に達しており、これらの状況を見た合同経済委員会でも「10年から20年の間に、仮想世界の経済活動は爆発的に拡大する」と判断。今回の動きに出たようだ。また、同委員会内の委員の話によると、仮想世界の経済圏には「適切な税制を整備する必要がある」とし、課税は避けられないとの見通しも示している。
【デジハリでの『Second Life(セカンドライフ)』無料セミナーレポート……4】でも報じているように、『セカンドライフ』に限っていえばゲーム内で製作されたデザインなどの創造物には、製作者に著作権があるとする判例を例にあげ、著作権の保有を認めている(元記事では「所有権」となっている)。一方、他の多くのネットワークゲームでは権利はすべて運営会社に属しているという判断・規約を設けている。
課税云々についてだけでも少々考えをめぐらせても、「どの時点で利益と判断するのか。ゲーム内通貨を得た時点か、ゲーム通貨を換金した時点か」「換金場所や換金された現金が多国に渡った場合、どこが課税するのか。サーバーが置かれている場所か、運営会社の所属国家か、換金が行われた場所・会社の所属国家か、現金を取得した人物の属する国か」「現金ではなくゲーム内アイテム、あるいは現実の商品などと交換した場合は課税はどうなるのか」など、考察すべき点はやまほどある。
また、『セカンドライフ』のようにゲーム管理会社側で相互換金システムが構築されているゲームは滅多になく、大部分が独自業者を介した仲介によるもの・一時預かり型の換金システムを用いている(RMT)。この場合課税対象は誰になるのか、など、非常にややこしい問題が生じてくる。
ネット上の通販で商品を取引した場合や、ネットトレードをした場合、金銭のやり取りはデジタルデータ上で行われる。これらは換金性100%が保障されているデータでのやり取りだからこそ、課税対象にもなるし、法的にも規制がかかりうる。しかしネットゲームの場合にはそうもいかない。あくまでも個人間の取引でしかなく、換金性・兌換性も保障されていないからだ。
この場合、オークション売買での利益の申告のように、あくまでも個人の良心に従った自己申告(確定申告での申告)に頼るしかないような気もするのだが、どうだろうか。また、合法的なRMT業者(が存在するのかどうかはさせおき)に対し、税制調査を強化し、利益をきちんと徴税するのも必要だろう。
あるいは『セカンドライフ』のような「現金兌換性」が保障されている経済システムを持つネットワークゲームに対しては、いっそのことゲームの利用料そのものから徴収するか、ゲーム内の売買システムに「消費税」を導入して一律何%かを納める仕組みを設けるのもありかもしれない(もっともこの場合でも「どこにその消費税を納めるの?」という問題は残る)。妙なところでリアルになって、複雑な気分になるのも事実だが。
また、このような金銭面での問題で議会まで動き出したのは、それだけ『セカンドライフ』をはじめとするネットワークゲームの社会的影響力が大きくなり、認知されるようになったあかしとも受け取れよう。特に『セカンドライフ』ではゲーム内で選挙活動を行う動きがあるという話も聞く(【参考:excite Web AD Times】)。その点から考えてみれば今件は非常に興味深く、今後が楽しみな話ともとらえられるだろう。
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