ある商品を見たり買ったりしたあとに、どんな商品をさらに見た、買ったかというデータの集計と表示はそれほど難しい話ではない。各トレースデータを集計し、分析すればよいだけの話。むしろ膨大な数字を瞬時に処理するコンピュータ・プログラムの得意とする分野だ。要はその計算をさせるプログラムロジックをどう組むか、発想の問題に過ぎない。

「この商品を買った人はこんな商品も買っています」機能はすでに日本のアマゾンでも全面的に導入されていて、各商品の購入傾向や同じような趣味を持つ人の趣向がうかがえて、非常に面白い。また、「似たような目的や趣向を持つ人は他にどのような商品を買ったのか」が表示されるということは、自分の好みに近いものが出てくる可能性が高い。「ああ、これもいいな」「そういえばこれを買ったらこちらも必要だな」と、「ついで買い」を誘発する可能性が高くなる。八百屋で例えると、じゃが芋を買ったところ「奥さん今日はニンジンとたまねぎも安いよ、どうだい、まとめて買って今日はカレーか肉じゃがにしてみないかい?」と薦められるようなものだ。非常に巧みといえよう。

今回本家アマゾンで確認できた機能は、これをさらに一歩推し進めた……というか発想をひっくり返してみたもの。具体例をいくつか挙げてみよう。

「この商品を見たけど買わなかった人は代わりにこれを買いました」事例

一番上の例では、「このアイスホッケーを見た人のうち83％の人が実際に購入しました。けれども9％の人は見ただけで買わず、代わりに『ズータイクーン』(動物園経営シミュレーション)を、9％の人は『ヨッシーアイランドDS』を買いました」と出ている。アイスホッケーゲームに興味はあって見てみたのだけど実際に購入するにはいたらず、代わりにこれらのゲームソフトを買った人がそれぞれ1割近くいる、ということだ。

二番目の例ではテーブルビデオゲームを見た人のうち38％の人が代わりに万能ナイフを、12％の人が「I Like You: Hospitality Under the Influen」という本を買ったと出ている。関連性が正直つかめない。

最後の事例はもっともよく出来たパターン。バスケットのシュートゲームを見て実際には買わなかった人の15％がiPodを買い、77％が別の室内ゲームを買ったと出ている。この場合は、「なるほど、77％の人がこれの代わりにこれを買っているのか!」と購入意欲を盛り立てることは間違いないだろう。

アマゾンで個別商品を表示させている場合、何らかの理由・目的で閲覧していることになる。その理由はたいていにおいて、何かの点でその商品に興味を持っているに他ならない。どのポイントで興味を持っていたのかは不明だが、ある点で心引かれるような傾向を持つ人は、代替案としてこれを買う傾向がありますよ、と薦めていることになる。

例えば閲覧したものの品切れだったり、高くて買えなかったり、好みのジャンルではあるけどちょっとどうかな、と首をかしげるような内容だった場合、「これの代わりにこれを買った人がいるよ」と薦められたら、やはり気になる。さらに具体的に「15％」「77％」という数字を挙げられれば、妙な説得力があるものだ。

例えるなら、訪問販売の人から「近所の人も買ってますよ」といわれるのと「隣の奥さんも、隣の隣の奥さんも買ってますよ、このマンションではすでに半数の人が買いましたよ」といわれるのとでは、説得されかたもケタ違いになるのと同じである。

今後購入データが蓄積されるにつれて、この「代わりに買いました」表示もより的確な商品を提示してくることだろう。日本のアマゾンで導入されるかどうか、また(されるとして)いつになるかは不明だが、本家の動向もあわせ注目していきたいところだ。