元記事にある「関連市場888億円の試算」とは、2005年に【浜銀総合研究所】が報告した【「少子化などにより伸び悩むなか新しい動きがみられるコンテンツ市場」－2003年のコンテンツ市場における「萌え」関連は888億円－(PDF)】からのもの。このレポートをきっかけに2005年における萌え関連銘柄の急騰が起きたくらいの影響力があった(【参照:急騰する『萌え』関連株、PDF】)。

「萌え」の多方面展開で最初に取り上げられていたのは【世界名作劇場、視聴限定ながらも10年ぶりに復活】で紹介した「世界名作劇場」の最新作「レ・ミゼラブル　少女コゼット」。元記事での感想曰く、”「フランダースの犬」や「あらいぐまラスカル」を知るファンには、隔世の感がある今風の絵柄”。そりゃまあ確かにそうだろう。逆にあのタッチで「フランダース」や「ラスカル」を見てみたい気もする。

続いて紹介されたのが、絵本の老舗ポプラ社が始めた新シリーズ『POP WONDERLAND』。「萌え系イラストによる子供向け絵本という”新しい試み”」という。『萌える英単語 もえたん』でヒットしたイラストレーターの「ぽっぷ」氏が『赤ずきん』『ふしぎの国のアリス』など、世間一般によく知られている童話に魂を注ぎ込む。単なる「萌え」としてではなくて、子どもにも好かれるタッチだからというのが採用された理由との事。

さらに、先に【茨城県下妻市に新萌えマスコットキャラ、シモン登場】で紹介したシモンちゃんに関するエピソードも紹介されていた。「お堅いお役所も」とはシモンちゃんのことであったか。話によると、なんとグッズの販売を持ちかける企業もあったとのこと。逸話として「萌えキャラとかそんなつもりはなく、HPのお堅いイメージを払拭(ふっしょく)したくて作っただけなんですが」という担当者のコメントも掲載されていた。

なお発表直後から物議をかもしていた「羽の模様がオスのものなので、シモンちゃんは実は男の子では」という件については「性別は決めていない」という返事。元記事よ、「一部のコアなファンを刺激したが」とか妙なツッコミを入れるな(笑)。

元記事には無いがお役所以外でも例えば【湯浅醤油の「とれたてみったん」シリーズ】に登場するキャラクタ(「みったん」?)が萌え系列に属するのではないかとして最近話題になっている。お堅いイメージのある醤油などの販売サイトでちょっと異色を放つ存在。このサイトには他にもクマ(店長?)や女性キャラが愛らしい姿で描かれており、好感を誘う。

他にも成人向けではない若年層向け官能小説にも、フランス書院が表紙や挿絵に「萌えキャラ」が自己主張する『美少女文庫』を展開、100点以上を刊行しているという。どちらかといえば、ライトノベルに近い内容で、中身も「美少女剣士やメイドさんとのラブコメなど」とのこと。

元記事をベースに色々過去記事やその他資料を調べつつ今記事を書く上で何度と無くツッコミを入れてしまいそうになったが(実際一か所入れてしまった)、単に「萌え」という言葉ですべて包括するには、そろそろ無理が来ているのではないかというのが率直な感想。

「ぷにぷにしたかわいらしさ、愛らしさを持つやわらかいタッチのキャラクタたち(特に女性)や、それらがおりなす世界観」をあらわす「萌え」。【Wikipedia】でも一応「その主たる話者達(いわゆるオタク層)が関心を抱く様々な対象に対して向ける、様々な感情を総称する言葉である」という説明はされているが、さまざまな論議が交わされ、事実誤認ではという指摘も多い。要は誰一人「萌え」を断定定義できていないのだ。

あえて表現するのなら、「何だかよく分からずこれと断定づけることのできない、ふわふわもこもことした、つかみどころのない、それでも愛らしい、心打たれるナニか」を指すのだろう。「こうである」と確固たるものとして固定できないものである、それこそが「萌え」の最大の魅力なのかもしれない。

(最終更新:2013/09/13)