新聞社ニュース集合体「47NEWS(よんななニュース)」をのぞいてみる

2007年01月14日 12:10

47ニュースイメージ先に【52紙から成る全国新聞ネット、ニュースポータルサイト「47NEWS(よんななニュース)」を12月24日から公開】など何度か取り上げてきた、共同通信社と各地の新聞社が集結して創り上げたニュースサイト47NEWS(よんななニュース)。運営会社全国新聞ネットによって2006年12月24日からスタートしたこのサイトだが、オープンから一か月ほど経ち試験運用期間も過ぎただろうということで、ちょっと中身を詳しくのぞいてみた。

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47NEWSのサイトポリシーには、サイトそのものの定義として次のように説明されている。いわく、

「47都道府県52新聞社のニュースと共同通信の内外ニュースを束ねた総合サイトです。これまで県境を越えることが少なかった地方発のニュースを一挙に掲載。ニュース発信の発想を転換します。津々浦々に根を張る1万人のプロの記者が取材したディープでワイドな地域情報をお伝えします。」


とのこと。また、実際にサイトを見てもらえば分かると思うが、ニュース内で取り上げられているキーワードのランキングやキーワードの関係をリンク線で表示したり、日本地図上でニュースの場所を指し示すなど、さまざまな工夫が見て取れる。ニュースサイトとしては実にそつない作りといえよう。

また、47都道府県すべての新聞社を網羅している(だからこそ「47」NEWSという名前がついている)のも強み。少なくとも日本中どこの地方ニュースも取り扱うことができ、実際トップページにはすべての県ごとに速報ニュースが一覧として掲載されている。非常にボリューム感あふれたサイトに見える。

47NEWSトップ画面。シンプルだがボリューム満点に見える体裁。また「これはよさげ」な仕組みも各所に盛り込まれている。色々と役に立ちそう。
47NEWSトップ画面。シンプルだがボリューム満点に見える体裁。また「これはよさげ」な仕組みも各所に盛り込まれている。色々と役に立ちそう。

ただ、よく見直してみると、それぞれの機能は特に目新しいものではなく、既存の技術の応用であったり、他サイトでも取り入れているもの。きわめて「堅め」、あるいはオーソドックスととらえる考え方もあろう。

さて。

[ヤフー(4689)]その他大手ポータルサイトなどにインターネット上の「ニュース配信」ブランドのお株を奪われている新聞社側の自己主張や、特にヤフーとの確執、情報の中央統括と[電通(4324)]の仕切りによるeコマースの展開に対する地方新聞社の不安など、さまざまな問題を抱え、あるいは噂されている47NEWSではあるが、実際の使用感や利用度はどうなのだろうか。

少なくとも多数の新聞社からリンクを受けているので、被リンク数が膨大な数に登るのは間違いない。ニュース内容が多種多様に及んでいるので内容がまとまっていないと判断される可能性もあるが、少なくとも既存新聞社サイトと同等、あるいはそれ以上の「重要度」があると検索エンジンからは判断されるだろう。

気になるのは47NEWSの特徴ゆえの弱点。実際に使ってみると分かるのだが、ニュースがあまりにも集まりすぎて焦点がぼけてしまい、それぞれのニュースのインパクトが薄くなってしまう。あるいはあまりにも雑多過ぎて「ごちゃごちゃしている」という印象しかなく、読むのに疲れてしまう。

その一方、各地方新聞社は全国ニュースの大部分を共同通信から「仕入れる」スタイルを採っている。そのため、いざ何らかの重大事件が発生すると、そのニュースが共同通信自身はもちろん、共同通信から仕入れた各地新聞社からも配信され、そのニュースでトップページが埋め尽くされてしまうことになる。非常に大変なことが起きたのだということは理解できるが、「そんなにたくさん要らないよ」というツッコミと共にウィンドウを閉じてしまう。

47都道府県すべての地域のニュースを網羅するのはよいが、ほとんどの人はすみからすみまで読むようなことはないはず。非常に気になるニュースや自分が関心を持つ地域の情報、それプラス全国規模の情報を求めているはずだ。

例えば、大手新聞社の場合はトップニュースを一つか二つ大きく取り上げ、あとはジャンルごとに最新ニュースを逐次タイトルかタイトル+ダイジェスト形式で取り上げ、興味があれば詳細を読むようにと誘導する仕組みを採用している。検索ポータルサイトのニュース配信コーナーの中には、自分の好きな条件にあったニュースのみを、カスタマイズした画面で表示するような機能を持ち合わせているものもある。正直、47NEWSのニュースは注意が分散してしまい、読みにくい。

「多くの情報が欲しい」のは間違いない。ただし単なる「多くの情報」ではなく、多くの情報の中から「自分が必要な、あるいは自分が気になるであろう情報」が欲しいのである。すべての情報を頭に入れようとしても、処理能力が追いつかずパンクしてしまう。

だからこそ新聞社も検索系ポータルサイトも、そして当サイトも含めた情報系サイトも、それぞれ運営会社・団体・個人という「フィルターを通して取捨選択された情報」を提供し、その傾向にマッチした読者を歓迎する。そして読者も、「自分の趣味趣向にマッチした、あるいは必要な情報を拾ってくるフィルターを持つ」媒体を選んで、定期購読したりブックマークをしたり、あるいはRSSリーダーやはてなアンテナなどに登録する。例えば犬好きな人が嫌犬記事の多いペット雑誌を読むことはしないだろう。

Alexaで47NEWSの来場者数を表示してみる
Alexaで47NEWSの来場者数を表示してみる(青線、【参照】)。比較対照として当サイト(Garbagenews.com、赤線)を併記してみた。開設直後はかなりの伸びを示しているが、その後は失速し、低迷を続けていることが分かる。多少の上下はあるものの、平均的にはほぼ当サイトと同程度。開設一か月なので今後伸びる可能性も十分にあるが……

47NEWSの意義と設立目的が「47都道府県52新聞社のニュースと共同通信の内外ニュースを束ねた総合サイト」であるのだから、これは仕方の無い、宿命的な問題点といえる。もしアクセス数の増加と、かねてから計画されている「eコマースの展開」をはじめとする次なるステップも難しいものとなるだろう。

47NEWSとしては、多数のコンテンツを束ね、それを効果的にスムースに便利に使いやすく読者に提供して支持を得る仕組みを創り上げねばならないのだろう。しかしその「仕組み」とは(すでに気がついている人もいるだろう)47NEWS自身が立ち上がった理由の一つでもある、そしてライバルでもある検索エンジン・ポータルサイトの姿そのものなのである。

検索エンジン系ポータルサイトからの脱却を図りたい、そのために創った新サイトなのに、求めるべき姿の一つがそのポータルサイトそのものという相矛盾する状況。47NEWSとしては苦悩を続けながら改良を加えていくことになるのだろう。あるいはまったく新しい方式での打開策を見つけ出し、インターネット界隈を大いに騒がせ、盛り上げてくれるかもしれない。

(当方としては)どちらかといえば後者に期待しつつ、今後の推移を見守りたいところだ。

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