【更新】不二家(2211)、営業停止の全国フランチャイズ店に対し休業補償へ・「期限内の牛乳を使う」ルールは無かったのか?
2007年01月14日 19:30
[YOMIURI ONLINE]によると、消費期限切れの牛乳を使ったシュークリームを製造・出荷するなどの事態が発覚し、1月11日から全国のフランチャイズ店の営業停止を指示していた【不二家(2211)】は1月12日、これらのフランチャイズ店に対して休業補償を行う方針を明らかにしたという。ただ、今回の決定で休業による経営への圧迫は売上減に休業補償が加わることになり、長期化した場合の負荷が懸念される。
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元記事によると不二家ブランドで販売できる契約を結んだフランチャイズ店は38都道府県に707店舗存在。不二家では製造工程の安全性が確認されるまで、1月11日以降店舗での販売を停止している。各店舗の通常の利益に比べた損害をもとに、補償額などを今後、詰めていくことになるという。
先に【「寝てないんだよ」では済まない・不二家(2211)での消費期限切れ材料を用いたお菓子出荷が続々発覚】でも報じたように、不二家では埼玉工場の「消費期限切れ※」牛乳の利用発覚をきっかけに、さまざまな問題が露呈している。周囲の反応とあわせ、ざっと挙げてみても次の通り。
・使用切れ牛乳使用のシュークリーム作成……計8回
・「アップルフィーリング」(アップルパイ)の賞味期限切れ使用……4回
・プリンの賞味期限の1日表示伸ばし……1回
・細菌検査で出荷基準に満たない「シューロール」の出荷……1回(食品衛生法上の規定の約10倍)
(以上公式サイト)
・埼玉工場内でのねずみの捕獲確認……2004年には1か月で50匹も
(以上1月11日のテレビ報道)
・「牛乳を使い残すことは想定しておらず、捨て方のルールは設けていない」
・昨年11月には事実が分かっていたが公表してこなかった。役員会では「先の雪印の二の舞になる」という話題が登って公表がはばかられる空気があった
(記者会見にて)
・製造記録や出荷記録を作る管理体制、出荷そのものや点検マニュアルが存在しない(埼玉県の立ち入り調査の結果)
・経済産業省が不二家のISO規格について臨時審査を要請(共同通信)
・品質管理を専門とする外部コンサル会社に全国8社の工場調査を要請、15日に結果を発表予定(朝日新聞)
・洋菓子以外をあわせ、31社が取り扱いを休止(毎日新聞)
・埼玉工場で原料の卵にも期限切れのものを使用、札幌工場では製造台帳に不備([埼玉新聞])
・テレビコマーシャルを自粛。
・昨年11月に購入して食べた消費者が腹痛やおう吐などの健康被害を受けたという苦情が数件寄せられていることが判明。15日の記者会見で発表予定。ただし苦情が寄せられたのは「問題公表の11日以降」([毎日新聞])
現在明らかになっている点を読み直すと、首を傾げたくなる部分もある。「牛乳を捨てるルールは無い」とあるが、それがダイレクトに「(消費)期限切れの牛乳を使う」ことにつながるだろうか。少なくとも「期限内の牛乳だけを使う」というルールがあるのだから、捨てるルールは無いとしても、「期限切れの牛乳を使う」ことでそのルールを破ることになる。
たとえ当初の見解の「現場がもったいないと判断したから」「捨てるルールが無かったから」としても、大前提の「期限内の牛乳を使う」というルールを守る体制が完備され厳守されていれば、今回のような事態は起きなかったはず。例えば「期限内の牛乳を使うというルールは破れないのだが、牛乳を捨てるしかない。捨て方のマニュアルが無い。どうしたらよいのか?」と本部なりに問い合わせをするはずだ。
可能性としては「1:現場で勝手に判断し、期限内の牛乳だけを使うルールを破った」「2:実は本部に問い合わせて、使ってよいと返答を受けた」「3:そもそも牛乳の期限に関するルールが無い」のいずれかが考えられる。1なら当初の説明どおりだが、2や3なら言語道断といえよう。
ただ、これらの不祥事はあくまでも生産現場や本部の成したところ。フランチャイズ店には責任はまったくない。写真にもあるように、11日以降フランチャイズ店は堅くシャッターが閉じられ、本部から指示されたと思われる告知文が掲載されているのみである。報道によると陳列してあったお菓子(生ものということもあり)のほとんどを廃棄してしまった店もあるという。不二家を愛し、お菓子を愛してフランチャイズ店を経営していた店主たちにとって、今回の不祥事はいわば「お菓子道への裏切り」にも等しいものとして受け止めていることだろう。
また、今回直接関係のある生もの系洋菓子以外のチョコレートやクッキーなどでは問題は見つかっていないものの、大手スーパーやデパート、コンビニでは販売を自粛するところが相次いでいる。
今回、体制の改善と品質管理の徹底をした上で生産再開にこぎつけるには、最低でも一週間かかるとしている。さらに信頼回復なども考えると、年末商戦についで洋菓子の稼ぎ時であるバレンタイン商戦に与える影響は少なくないと思われる。
また短期的な話ではなく、一部上場の不二家ですらこのような「体たらく」だったのかという事実が食品業界全体に与えた衝撃は、きわめて大きいといえる。多くの人が「食の安全」に対する不信感を募らせていることだろう。
※「消費期限」……今回問題になった牛乳のように傷みやすい食品の期限表示方法。食品衛生法およびJAS法で規定されている。所定の方法で保存した場合に安全性を欠く恐れがない期限を示してる。世間一般の食品でよく見かけられる、味や風味を保証している「賞味期限」とは別物。要は「食べると危ないかも」か「美味しくないかも」の境界線の違い。
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