1月から所得税が減ってもぬか喜びはダメよ・「所得税マイナス」+「住民税プラス」+「定率減税廃止」=「増税」

2007年01月21日 20:00

「地方分権」を旗印に、国の財源の一部を地方に移す「税源移譲」が今年から影響を及ぼし始める。簡単に言い換えると、「国に支払っていた税金の一部が、それぞれが住んでいる地方に支払われる」というもの。しかし国に支払う「所得税」と地方自治体に支払う「住民税」は、支払いのタイミングがずれるため、一月の段階では「減税」に見え、六月になると「増税」に見えてしまうため、政府では必至に広報活動を行っている(【説明ページ】)。

スポンサードリンク

「見えてしまう」というのは少々語弊がある。確かに「所得税」の一部が「住民税」に移行した分はそのままプラスマイナスゼロだが、同時に【定率減税も廃止されてしまう】影響が出るため、支払う税金の額そのものは実際に「増税」となってしまう。だから「”税源移譲による”増税は無い」と表現するのが正しい。

図にすると大体このような形になる。

税源移譲前後の税金の概念図。所得税分が減り、その分住民税が増える。さらに定率減税が廃止されるので、全部併せると増税になる。
税源移譲前後の税金の概念図。所得税分が減り、その分住民税が増える。さらに定率減税が廃止されるので、全部併せると増税になる。

定率減税が廃止となったのは「景気が回復したから」という説明だが、少々首を傾げたくなるものでもある。

それはさておき。実際に、定率減税の廃止も含めて住民税と所得税がどれくらいプラスマイナスされるのかを確かめるには、【住民税額計算シート】を使うのが一番手っ取り早い。ここに、昨年度の住民税の額を入力すると、「定率減税で軽減されていた額」「今年度の概算住民税」「今年度の概算所得税の増減額」が計算される。

試しに住民税を10万円と入力して計算してみた。定率減税で7800円軽減されていて、今年度の住民税概算は20万5300円、所得税は9万7500円だけ減るとのこと。ただしここから定率減税減額分が加算される。
試しに住民税を10万円と入力して計算してみた。定率減税で7800円軽減されていて、今年度の住民税概算は20万5300円、所得税は9万7500円だけ減るとのこと。ただしここから定率減税減額分が加算される。

なお後者二つには小さく「このほか所得税・住民税の定率減税の廃止による影響があります」と記載されている通り、所得税の場合は税額の10%控除(12.5万円上限)・住民税の場合は7.5%控除(2万円上限)が無くなるので、去年よりもそれだけ増税ということになる。

また、所得税は1月から反映されるが、住民税は6月徴収分から反映されるため、新しい税体系で税金を支払うタイミングが半年ほどずれることになる。1月に「所得税が減った、ラッキー!」と思って浮かれていると、6月に住民税がドカンと増えて「なんじゃこりゃぁ!」と驚くことになる。

上記の写真の例の場合、所得税は10万近く減るが、その分住民税が増えるので、住民税はほぼ倍増となり、腰を抜かすことになる。

結局増税分は定率減税の廃止分のみなのだが、(上記の例なら)住民税倍増のインパクトは大きい(住民税の元々の額によって、増加率も異なる。例えば昨年度の住民税が20万円の設定では、今年度は31万3400円と、1.5倍強となった)。6月以降に慌てふためかないよう、今から心とお金の準備をしておくことが肝心である。


■税源移譲と増税に関する一連の記事:
(6/22)【「住民税が2倍に増えた」「自営業者はツラい」の謎を探る(3)……他の税制の対応が追いついていない】
(6/22)【「住民税が2倍に増えた」「自営業者はツラい」の謎を探る(2)……定率減税廃止がかなめ!?】
(6/19)【「住民税が2倍に増えた」「自営業者はツラい」の謎を探る】
(6/13)【住民税倍増でクレーム殺到・税源移譲問題再考】
(3/23)【「税源移譲」「定率減税撤廃」3割が知らない】
(1/23)【もう一つの大増税!? 税源移譲で変わる国民健康保険の額】
(1/21)【1月から所得税が減ってもぬか喜びはダメよ・「所得税マイナス」+「住民税プラス」+「定率減税廃止」=「増税」】

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ