大きさ1/10の観賞用植物を自在に作れる技術を理研が完成・品種改良への応用も
2007年01月20日 10:30
【理化学研究所】は1月18日、植物の成長ホルモンの働きを意図的に抑えることで、通常の10分の1程度の大きさしかない「ミニ植物」を作り出すことに成功したと発表した(【発表リリース】)。観賞用植物の育成はもちろん、風害に強い作物への応用など、さまざまな分野への活用が期待される。
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理研の研究グループではほうれん草などの野菜や穀物の品種改良に、成長ホルモンの「ジベレリン」を用いて成長をうながすことに着目。このジベレリンについて詳しく調べたところ、背丈の低い植物ではジベレリンをブロックして働かせなくする酵素があることを発見した。この酵素がどんな仕組みで作り出されるのかをさらに調べたところ、「GAMT1」「GAMT2」という2種類の遺伝子によるものと判明。
そこで実際にシロイヌナズナ、タバコ、ペチュニアにこれら「GAMT1」「GAMT2」が多量発生するよう品種改良したところ、ジベレリンが通常よりも抑えられ、10分の1ほどのサイズのミニ植物になった。さらにそれらのミニ植物に外部からジベレリンを加えると通常サイズに戻ってしまった。つまりこれは(成長している生物そのものをミニサイズに戻すことはできないが)植物の大きさをコントロールできることを表している。
シロイヌナズナでGAMT1を過剰に発生させたもの(左)と通常のもの(右)。ミニサイズ化しているのが分かる。
ペチュニアでGAMT1を過剰に発生させたもの(左上)と通常のもの(右)。勢いからして違ってくる。また、ミニサイズの状態にジベレリンを投与すると元に戻るという。
今回発見された、植物の成長を抑える「GAMT1」「GAMT2」を他の植物にも適用することで、例えば「世界最大の花といわれるラフレシアを鉢植えで育てる」ことや「テーブルプラントとしてさまざまな観賞用植物を提供する」こと、さらには「老齢者でも収穫しやすい背の低い作物」「風に強い背丈の短い作物」「風害を防ぐための防風植物」の作成なども可能になるだろう。
もちろん後者では遺伝子操作による作物を食用として良いのかなどの問題もあるし、他の植物でも「GAMT1」「GAMT2」が同様の効果を発揮するのかなど、検証すべき課題も多い。しかし今後色々な方面で期待ができる技術であることには間違いないだろう。
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