【更新】アメリカで復活しつつある合言葉「メリー・クリスマス」
2006年12月22日 06:30
[産経新聞]において、昨今のアメリカ事情を象徴する一つの言葉について興味深い記事が掲載されていた。この時期アメリカ発の記事やサイトでよく目にする・耳にする「ハッピー・ホリデーズ」という言葉が、今年は以前用いられてきた「メリー・クリスマス」に差し替えられるケースが増えているというのだ。元記事では多民族国家として、少数派の文化や宗教の尊重を強調する「多文化主義」に対する揺り戻しが起きていると分析している。
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元々この時期の「メリー・クリスマス」という言葉はキリスト教色が強く、他宗教を信仰している人への配慮に欠くという指摘があった。「仏教概念を信仰しつつクリスマスを楽しみ、正月には神社に初詣にいく」というスタイルに象徴されるように、宗教概念の薄い日本人はあまり実感が沸かないが、多民族国家であるアメリカでは深刻な問題。公共の場では「メリー・クリスマスと来場者に声をかけないように」という指導がなされ、学校や空港ではクリスマスツリーなどの飾りつけが禁じられる場合が多いという。「クリスマス」という言葉自身の利用を禁じる場もあるほどで、一歩間違えれば「言葉狩り」にもなりかねない雰囲気。
実際当方(不破)がかつてアメリカ産の多人数同時参加型ネットワークゲームを楽しんでいた際も、年末年始のゲームイベントで当初「メリー・クリスマス」云々と表記されていたのが、お詫びの文章と共に「ハッピー・ホリデーズ」に差し替えられたのを記憶している。ネットワークゲームの世界ではアメリカ以上に多民族・多宗教化が進行している。そのため、配慮の必要度も高い。日本人の当方としては違和感と共に、アメリカの特殊事情を改めて知らされた形だ。
ところが今年に入り、「クリスマスの復権を」という動きが加速しているという。例えばアメリカ最大の小売業「ウォルマート」は今年に入り、「メリー・クリスマス」の言葉を復活させた。これは公的には「顧客の意見に耳を傾けた結果」としているが、保守派からの抗議を受けたためともされている。またこの動きはKマートやメイシーズなどのスーパーやデパートにも広がりを見せている。
さらに公立学校の一部や、ミズーリ州知事の発言、オンラインギフトショップでの表記の統計データ(「クリスマス」と明記したものは2004年の42%から2006年は73%に伸びた)などを挙げ、「クリスマス」を政治利用してきたことへの反動が起きているという指摘があることを報じている。
あらためてチェックしなおしてみると、日本の通販サイトでは「お正月特集」と共に大々的にクリスマスキャンペーンがもよおされ、おなじみの赤白姿のサンタさんと共に、イルミネーションを模したきらびやかなデザインがあちこちで目に留まる。「クリスマス」という言葉が色々と問題視される可能性があることなど、まったくお構いなしだ。
一方でアメリカの通販サイトや情報サイトを見直してみると、確かに(「クリスマス」表記が増えてきたとはいえ)、サンタやトナカイ、もみの木などのビジュアルや「メリー・クリスマス」の文字が配されているページは滅多に見ない。せいぜい、アメリカ防空司令部(NORAD)がこの時期になると、ジョーク企画として【サンタクロースを米軍の防空網で追尾するというサイト】がもりあがる程度だ。
互いを尊重し、邪魔をすることなく共存でき、互いを楽しむことができれば、サンタだろうと潅仏会だろうと初詣だろうとラマダンだろうと一向にかまわない。互いの宗教文化を知り、造詣を深めることで、新しい何かを得ることもできるだろう。その観点からいけば、サイト上でサンタが自在に飛び交う日本は、もっとも理想的な状況なのかもしれない。
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