牛乳の成分「ラクトフェリン」が放射線障害から体を守る!?
2006年12月16日 07:45
【独立行政法人 放射線医学総合研究所】は11月28日、牛乳などに含まれるラクトフェリンという成分が放射線障害から体を守る顕著な効果があることを、マウスを用いた実験で明らかにしたと発表した(【発表リリース】)。非常に安価で手に入りやすい食品であることから、特に被ばく後に投与して有効な効果を示す治療用薬剤としても注目を集めている。
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今回発見された「ラクトフェリン」という物質は、母乳や牛の乳汁(牛乳)に含まれるものが有名だが、その他、ウマ、マウス、ラット、ヤギなど多くのほ乳動物の乳汁及び涙などの分泌物にも含まれている。また、これら天然に得られるラクトフェリンの他に、遺伝子工学を用いた手法により得られたラクトフェリンも化学的組成が変わらないことから同様に使用可能だとしている。
ラットによる実験の結果、「ラクトフェリン」を投与したラットではそうでないラットと比べ、被ばく前後いずれにおいても投与したラットの方がそうでないラットと比べ、高い生存率を示した。詳細を調べたところ、「ラクトフェリン」投与によって、「(1)細胞組織などを破壊するプロセスで生じるヒドロキシラジカルの発生を阻止するらしい」「(2)免疫機能が低下している間に善玉菌の数が増加している」などの効用が確認された。
今後研究グループでは、ラクトフェリンを抗放射線被ばく薬剤として活用するため、ラクトフェリンの放射線防護機構の解明に注力すると共に、投与方法や他の薬剤との併用効果を調べ、効果的に活用できる予防薬・治療薬としての可能性を模索していくという。なお放射線医学総合研究所は「抗放射線被ばく障害剤」として特許出願を完了している。
今件を一言で簡単にまとめると、「牛乳を材料にしたラクトフェリンという物質で、安くて量産できる、しかも被ばく前後両方において効果的な、対放射線障害薬品が開発されそうだ」ということになる。
特に前世紀末期、ソ連のチェルノブイリ原発が事故を起こした時に、放射能障害を防ぐ薬品としてヨード剤(実は事前に摂取しないとほとんど意味がないのだが)の名が知られるところとなった。しかし今回の「ラクトフェリン」は「容易に安価で大量に生産が可能」「事前・事後いずれにおいても効果が期待できる」という2点で画期的な効用を示している。今後さらなる効用の確認と製品化に向けた研究が必要だろうが、この分野における劇的な進歩が期待できよう。
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