カレー専用のお米「華麗舞(カレー米)」、米どころの新潟県で誕生
2006年12月05日 19:30
NHKの朝のニュースでカレー好きな当方(不破)としては聞き逃したら三日間は後悔するであろう話「カレー専用のお米、華麗舞(かれいまい・「カレー米」から)」が紹介されていた。NHKの公式サイトでは何のフォローもされていないようなので、こちらで簡単にではあるがまとめてみる。それにしても朝からあれほど美味しそうなカレーのビジュアルがテレビ画面一杯に映し出されるあたり、当方にしてみればまさに「おあずけ」を受けているようで複雑な気分(笑)。
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「華麗舞(カレー米)」(【発表資料】)はお米の名産地である新潟県で生まれた。コンセプトは「カレーライスにぴったりあうお米」。もちろん多分にしゃれも込められている。米粒同士がくっつきあうことが無く、カレーのルーになじみ易いのが特徴。まさにカレー(などのルーもの)のために生まれたお米といえよう。数年前にタイ米が大量に輸入された際に、その性質から「カレーやチャーハンにはタイ米が似合う」といわれたものだが、それよりマッチするかもしれない。まだ食べていないので比較は出来ないが資料によれば、カレーをかけた状態で食べてもらったところ、コシヒカリやサリークィーンよりも美味しいと答えた人が多かったとのこと。
この米を開発したのは、新潟県上越市にある【中央農業総合研究センター北陸研究センター】。米を中心に農産物の品種改良を行っている。今回の「華麗舞(カレー米)」は日本の米「アキヒカリ」と東南アジアで栽培されている「密陽23号(インディカ米)」を交配して作られた。【データベースの資料】によると、品種名は「北陸149号」。アキヒカリは祖先にササニシキを持つ名門のようだ。
「華麗舞(カレー米)」の最大の特徴は実際に炊いた時に現れるという。やわらかさはコシヒカリと同等。表面はコシヒカリのように粘りがなく、米粒同士がくっつくことは無い。具体的には表面は硬めで、内部はコシヒカリ並にやわらかいという。つまり日本米の「やわらかい」と、インディカ米の「ぱさぱささ」の両方の性質を併せ持ったものとなる。中央農業総合研究センターの実験では、コシヒカリの2倍の速さで周囲の液体(ルーなど)を吸い込み、中までしみこむことが確認されたという。
放送では「華麗舞(カレー米)」の開発の背景も説明されていた。いわく、消費者の米離れが続いているという現状から、それに対処するためのものだという。元々は1979年にすでに収穫量の多い米として開発に成功しており、その後品質の向上化が図られていた。が、寒さに弱い、収穫量が期待より少ない、さらには米あまりの状況下ではあまり意味がないとの理由から一度1995年に育成が中断された。
しかし「粘りけが少ない」「弾力性に富む」そして何より「カレーに合う」という食感・特徴は珍しい部類で、去年再び脚光を浴びることになったという。特に「カレーに合う」という点をアピールすれば、お米の消費をかきたてられるのではないかと考えたわけだ。
中央農業総合研究センターの三浦清之氏は「米の利用が多様化している。そこで特性を持った品種で付加価値向上を図れる」と述べ、この「華麗舞(カレー米)」の狙いを説明していた。
研究所では「華麗舞(カレー米)」をいち早く普及させようと、カレーの開発販売に長けている食品メーカーに協力を求めた。番組では単に「大手食品メーカー研究所」としか説明が無かったが、その場所やビルなどから【ハウス食品(2810)】のソマテックセンター(研究所)であることが確認できた。ハウスではカレー専用のお米を使うことで、商品の魅力を高められるのではないかと考えているという。現在ハウス食品側でも独自に米の各特長を分析し、どのようなカレールーがマッチするのか研究を進めているという。研究所の北川泰弘氏は「カレーライスなどのご飯メニューに華麗舞(カレー米)を使うと新しいおいしさを届けられる。非常に面白い素材だ」と華麗舞への期待を寄せている。
しかし「華麗舞(カレー米)」にも弱点がある。他の米と比べると粒が細いため、一般の精米機を使うと米粒が割れてしまうのだという。そこで中央農業総合研究センターでは、この米を大量に扱う企業に対して、専用の精米プラントを作ってもらえないかとアプローチをかけているのだそうな。
日本ではカレーは今や「国民食」と呼べるほど普及し、老若男女を問わず愛されている。カレーの日本における消費量は年間80回(【スパイス&ハーブ総合研究所】)、世界でもインドに次いで第二位。また日本国内ではラーメンよりも多いとされている。もしカレーと連携してこの「華麗舞(カレー米)」がヒットすれば米離れも……という期待が、特に新潟県にはある。
米離れという一般論以外に、直近の問題として新潟県の名産品であるコシヒカリ(作付けの8割以上を占める)が、価格の安いほかの米におされ気味で、去年は市場で売れ残ってしまったそうだ。そこで「コシヒカリだけに頼ることなく、新しい柱となる米を開発しよう」という思いがこの「華麗舞(カレー米)」には込められているとのこと。
調べてみた限りではハウス食品からは一切発表は無く、「華麗舞(カレー米)」という名称もわずかに地元の新聞で語られている程度。精米機の問題などもあり、まだ流通できる段階ではないらしい。番組の内容や地方紙の報道を見る限りでは、おそらくハウスからカレーと一緒にパッケージされた冷凍食品などの形で先行販売され市場に出回ることになるのだろう。
カレーにきわめてよくなじむ、しかもコシヒカリと同じようなやわらかさを持ったお米で食するカレーがどのような味わいを見せてくれるのか。ぜひとも試してみたいものである。
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