「将来の食料供給に不安」76.7%を占める・内閣府調査

2006年12月24日 18:00

食料イメージ【内閣府】は12月21日、11月に行った「食料の供給に関する特別世論調査」の概要を発表した(【発表リリース、PDF】)。それによると日本の将来の食料供給に何らかの不安を覚えている人が76.7%にものぼることが明らかになった。

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今調査は11月9日から19日までの間、20歳以上の3000人に対して行われたもので、うち1727人が有効回答を行った。調査項目は日本の食料供給に関するもので、全部で6項目。

●「食料自給率40%は低い」70.1%
一つ目の質問は「日本の食料自給率が40%(カロリーベース)であることについてどう思うか」。「低い」が47.0%と約半分を占め、ついで「どちらかというと低い」が23.1%。「妥当な数値」11.8%や「どちらかというと高い」3.6%、「高い」2.0%と比べると「低い」派が多いことが分かる。なお2000年における前回調査では、「低い」「どちらかというと低い」があわせて52.8%だったのに対して今回調査では70.1%と20%近い伸びを示しており、食料自給率が現状では低いという認識が高まりつつあるのが分かる。

●「将来の食料供給に不安」76.7%
次に「日本の将来の食料供給について」という問い。「非常に不安がある」が28.7%、「ある程度不安がある」が48.0%となり、この二つをあわせた「不安派」は76.7%にも達した。一方で「あまり不安はない」16.3%、「まったく不安はない」2.1%と、不安を感じていない人も2割近く存在する。
 
なお、具体的な不安の理由については前回調査と比べると人口増加を理由とする不安が減る一方、国際情勢による輸入状態の変化や地球環境の問題、異常気象や災害による不作の問題を原因としておきうる供給不足を挙げている人が増えている。

稲作イメージ●「食料輸入が途絶えたら大変」73.4%
三つ目は「食料の輸入が途絶えた場合に起きること」という設問。「食料の価格上昇だけでなく配給制の実施などで欲しいものが手に入らなくなる」がもっとも多く47.5%。ついで「食料の供給が絶対的に不足し、飢えの心配が生じる」が25.9%と危機感を覚える人が73.4%に達した。一方で、「値段は上がるが国内生産が盛んになるから心配無用」13.8%、「そのような事態はあり得ない」5.7%と、楽観視する人も2割近くいた。

●「望ましい食料自給率」は60~80%
四つ目の質問。現状40%の食料自給率について、本来ならどれくらいが望ましいかという問いには、「60~80%」と答えた人が49.0%とほぼ半分を占めた。ついで「50%」が20.4%、「90~100%」が6.9%、「100%を超える水準」が2.3%となり、現状より上が望ましいと考える人があわせて78.6%と8割近くを占めた。その一方、「現状のままでよい」が10.5%、「現状より低くてもかまわない」が2.0%いた。

●「食料は国内で作ったほうが良い」86.8%
五つ目は「日本の食料生産・供給のあり方」について。これは三択+「その他」「分からない」から選ばせるというスタイルが採られている。「外国産の方が安ければ輸入した方がよい」は7.8%に過ぎず、「外国産より高くとも、米などの主食は生産コストを引き下げながら国内で作った方がよい」が44.5%、「外国産より高くとも、食料は、生産コストを引き下げながら国内で作った方がよい」42.3%となり、主食のみか食料全体かは別にして「日本国内で食料を積極的に作り供給できるようにすべきだ」と考える人が9割近くを占めている。

注目すべきは「外国産の方が安ければ輸入した方がよい」と答える人が年々減少していること。1987年の調査では19.9%と2割近くの人が答えていたのに対し年々減少し、前回調査の2000年では10.5%となり、ついに今回は1ケタ台となった。その分「外国産より高くとも、食料は、生産コストを引き下げながら国内で作った方がよい」が増えており、国内食料生産の重要性を感じている人が増えていることがわかる。

●「国内生産拡大」「国産品消費など消費面からの取り組み拡大」が重要
最後の質問は「食料自給率を向上させるためにはどんな施策が必要か」。もっとも多かったのは「生産面からではなく、むしろ食育の推進や国産農産物の消費促進など消費面からの取り組みの拡大を図る」というもので37.5%。国内生産品の消費が増えれば引き合いも増えて生産も活発化し、結果として生産量も増え自給率が高まるという考えなのだろう。続いてほぼ同じく36.7%を占めたのは「消費者のニーズにあわせた国内生産の拡大を図る」。こちらはダイレクトに国産品のボリュームを増やそうという考え。

一方で「財政負担をしてまで対策を打つ必要は無い。自主的に行わせるべき」10.2%、「国も生産者も取り組みの必要は無し」5.0%と、突き放すような意見も見受けられた。

●まとめ……自給率低下という現実と向き合うために
実際に【農林水産省のデータ】で確認してみると、カロリーベースの食料自給率はデータが残っているうちでもっとも古い1960年の79%を最高にじわじわと下がり始め、1989年には50%を切り、なおも下落傾向が続いている。

日本の食料自給率
日本の食料自給率

農林水産省側では【食料自給率は高い方がいいの?】などで、

現在も続く世界人口の増加や、天候不順・気象災害がもたらす農産物の被害、BSEや禁止農薬の残留による輸入停止といった情報は多くの人が持っており、それが食料供給への不安となっていると思われます。

食料の輸入増加は私たちに豊かな食生活をもたらしました。しかし上記の例にもあるように、将来的にみた場合、今までどおりの食料輸入を続けることができない可能性もあります。そのため、日々の生活の中で欠かすことのできない食料は、自分の国の中でできるだけ多く生産し(=食料自給率の向上)、輸入や備蓄と組み合わせることにより、安定的な食料供給を目指す必要があるのです。


と語り、食料自給率の向上の必要性を訴えている。

今回内閣府が発表した統計データを見ても、昨今の近隣諸国をはじめとする外国からの輸入食料品の安全性の問題が叫ばれていることもあり、(問題のある食料の生産自身を国内法で制限できる)国産食料の増産と食料自給率の向上が必要であるという認識は高まりつつあるようだ。

昨今ロシアの天然ガス開発事業「サハリン2」がロシア国内企業による強引な政治誘導によって権益の大部分をロシア国内の企業に奪われたことをはじめ(【参考:産経新聞】)、諸外国では戦略物資となりうる天然資源を各国のコントロール化に置くという動きが強まっている。東シナ海の日本領海内における中国側の海底ガス田の強制掘削問題も現在進行中の話だ。

食料品についてもこれらのエネルギー資源同様に「戦略物資」として同じような動きがいつ何時起きるかどうか分からないし、「そんなことはありえない」と断定することは誰にもできない。その観点から考えれば、国内食料自給率は高めるべきであるという考えはきわめて妥当だといえるだろう。

そのためにも法改正をはじめとしたさまざまな政策を打ち出すことにより、最後の質問の選択肢にもあったように「生産面からではなく、むしろ食育の推進や国産農産物の消費促進など消費面からの取り組みの拡大を図る」「消費者のニーズにあわせた国内生産の拡大を図る」という、「消費と生産の両方の観点」から国内生産の増加を模索するべきだろう。

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