「イエスタデイをうたって」はごく平凡な大学卒業後フリーターとしてバイトを続ける主人公魚住と、彼の前に現れた、カラスを連れたちょっと風変わりな少女・野中晴ことハル、そして彼ら・彼女らを取り巻く人々の間で繰り広げられる、ごく平凡な生活の流れを描いた物語。ぬるま湯のような、ただ流されるような日常の中で時を過ごす人たちの、それでいて自分らしさを求めようともがく微妙な雰囲気がにじみ出てくる作品。

盛り上がりが見られる場面が特にあるわけでもなく、普通の人たちの社会生活を遠眼鏡で見ているような雰囲気は、好き嫌いがはっきり分かれる作品ではある。が、特に主人公の考えやもどかしさを覚える気持ちに共感を覚える人も多いことだろう。

今回登場するフィギュアは、単行本の付録として最近流行のスタイルとなったものとしてはかなり大きめのもので、全高180ミリ程度。原型製作は宮川武氏。肌色はPVCの透明感を生かした素材肌だという。また、すべての工程で漫画原作の冬目景氏による監修が行われているとのことで「漫画のイメージとは違う」という悲劇が起きることもなさそうだ。上記公式ページや最新号の「ビジネスジャンプ」には、さまざまな角度からフィギュアを眺めた写真が掲載されているので、具体的にはそちらをご覧あれ。

個人的には上記説明からもお分かりの通り(笑)どちらかというと肯定派の一人。最近大流行の某ライトノベルとどことなく似たような「香り」をほんの少しだが感じ取ることもできる、というのは気のせいかもしれないが、そんな気分にすらさせてくれる。

小説や漫画に登場するキャラのフィギュアを同梱させるという手法は、読み手の親近感・感情移入を増幅させてくれるという意味でプラスに働くことが多い。もちろんそれは、提供される漫画・小説そのものは当然として、フィギュアの「できばえ」も良いものでなければならない。見本品と同じクオリティが量産一般販売品でも保たれることを祈ろう。

(最終更新:2013/09/15)