相次ぐ医療ミスへの対応、お手本となるハーバード大の手引書翻訳がネット上で公開

2006年11月26日 19:30

時節イメージ医療事故における真相の究明と謝罪の普及を目指す【医療事故:真実説明・謝罪普及プロジェクト】は11月16日、アメリカで普及している医療事故発生時の対応マニュアルを日本語訳したものを同グループサイト内で全面公開した(【発表リリース】)。医療現場におけるリスクコントロール手法が確立しているとはいえない日本において、大いに参考になりそうなマニュアルといえる。

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この団体は日本国内の医師や患者支援団体のメンバーから構成されているもので、マニュアルはアメリカのハーバード大学など関連16病院が実際に使っているもの。同大学の公衆衛生大学院に所属するルシアン・リープ教授が中心となり、医師や弁護士、患者らの意見を参考に2006年3月に正式に発刊された。

今回医療事故:真実説明・謝罪マニュアル~本当のことを話して、謝りましょうとして公開された当マニュアルでは、「医師が医療過誤を起こした場合は、その内容を患者さんやご家族に説明をして、きっちりと謝罪をするということが中核」となっている。同団体では今マニュアルが広まることで、日本でもこの考え方が広まることを願っているという。

マニュアルは全文版が62ページ、箇条書きによる教訓集のようなエッセンス集が2ページの構成。後者は医療関係者が常に携帯し、繰り返し読むように薦めている。エッセンス集の一部を抽出してみよう。

★1 インシデント(医療事故)発生直後の情報公開についての一般原則
・インシデント発生についての事実だけを伝えましょう――すなわち、何が起きたかということを伝え、どのようにしてなぜその結果が起きたのかあなたが信じていることは伝えないようにしましょう。
・信頼できる情報が手に入ったときには、適切なタイミングで情報提供しましょう。
・さらなる診断や治療について、あなたが推奨することを説明しましょう。
・今後の予想される経過の見通しについて説明しましょう。

★2 十分に情報を伝えるための4つのステップ
1. 患者さんとご家族に何が起こったかを話します。
2. 責任をとります。
3. 謝罪します。
4. 今後の医療事故を予防するためになされることを説明します。

★3 だれが、どのようにコミュニケートするか
・信頼されている医療従事者が、最初のコミュニケーションを主導しましょう。
・次の治療を担当する人が、その次のコミュニケーションを主導しましょう。
・患者さんの主任看護師を、コミュニケーションに関与させましょう。
・コミュニケーションの技術について、スタッフにコーチしましょう。
・静かな個室の空間を、コミュニケーションの場所に選びましょう。

(以後12まで続く)


いずれも「ごく当たり前の話では」と思うかもしれないが、当たり前だからこそ実践するのが難しいといえる。

医療が人間の「わざ」によるものである以上、どうしてもミスが起きる可能性はありうる。その上で、ミスが生じた場合にどうすべきか、どう対処すれば医師も病院も患者も関係者もベストとはいわないまでもベターな方向に導けるのか。その手立てを説明したガイドラインはあまり見受けることができない。「そもそも医療事故など起きない」という前提の元に動いている人が多いからなのかもしれないが、それだからこそ昨今における「医療ミスの発覚とその後の対処の稚拙さ」が目立つのだろう。


(最終更新:2013/09/15)

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