政府税調、証券優遇税制の廃止議論で「市場のかく乱」は避けるべきと主張
2006年11月22日 06:30
【ロイター通信】が報じたところによると、政府税制調査会の本間正明会長は、昨今の株安・市場の不安定さの最大要因に証券税制の優遇措置撤廃の動きがあるのではないかとの指摘に対し、「見直しに際しては、(株式市場の)かく乱要因にわれわれがなることは避けるべき」とし、撤廃するにしても暫定措置などを求めるべきとの考えを明らかにした。
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政府税調側では証券優遇税制についてこれを撤廃する方向で意見がほぼ一致している。しかしこれを受けて株式市場は軟調の状況を呈しており、これについては「そういう懸念も一部には存在すると思う」と他人事のような発言をしている。さらに株安の原因として「今の段階は来期の企業収益の見直しをしていないことや、月例経済報告の中で景気の表現ぶりがトーン・ダウンするのではないかとの議論がある。そうした状況にわれわれが追い打ちをかけることは避けたいと思っている」とし、あくまでも自分たちが主張している「証券優遇税制の撤廃」が、単なる一要因に過ぎず、主な原因ではないという認識を示している。
さらに、「いわゆる証券会社を含めた実務的なレベルの人々が、市場や投資家に対して、ソフト・ランディングできるような手法があり得るかどうか。あるとすれば、どのようなものか検討してほしいと(きょうのグループ・ディスカッションで)申し上げた」と述べ、すでに証券優遇税制が廃止されることが確定事項として定められているかのような言をした上で、何らかの代替案としての軽減措置を検討し、優遇措置撤廃そのもの修正はしないことを語った。
一方【共同通信】などが報じたところによると、政府税調の「法人税下げ」「証券優遇税制撤廃」という動きに対し、自民党税制調査会では津島雄二会長が共に否定的な考えを示すなど、対決姿勢をあらわにしている。インタビュー記事によれば、法人税の引き下げについては「企業は法人税より年金保険料の方が負担が重く、両方(のバランス)を議論しなければならない」とし、企業負担の軽減には同意するものの、法人税だけを下げる方法に異議を唱えている。経済界の減税要求には「法人税収が増えたから税金を返せ、という主張はいかがなものか」とし、苦言を呈した。
また、証券優遇税制の撤廃の是非については「期限が来たからおしまいと単純に言うべきではない」と述べ、株式市場への影響などを見極めながら、廃止するかどうか慎重に結論を出す考えを強調している。さらに政府税調の動きに対し、「与党が税制の原案を決める」とし、くぎを刺している。【Mainichi INTERACTIVE】でのインタビューでも津島会長は、「株式の買い控えや売り急ぎが起こると困る。期限が来たからおしまいという単純なものではない」とし、真っ向から対立する姿勢を見せている。
少なくとも個人投資家の間では(このネタを元に売りあおり、不安がらせようという「株価が下げて欲しい」と考える人らの思惑も多分にあるのだろうが)、証券優遇税制の撤廃は大きな問題、投資マインド・モチベーションの低下要因として存在するのは事実である。銀行の税制問題(徴税モラルハザード)や周辺地域情勢をはじめとした国際情勢の動向、それに伴う原油高、さらには三角合併の話などもあるが、直近の株価安の最大の要因はひとえにこの「証券優遇税制撤廃」の話に尽きる(それプラス【民主党、「株式売却益課税を30%へ」との考え】にもある、「せっかくだから20%といわず30%にしちゃえ」という無茶な発言が野党第一党の中枢部から出たのも影響している)。
配当も売却益も税金が2倍になるのなら、今のうちに利益確定=売却しちゃった方が得だと考えるのは人の常であり、売却する人が増えれば需要と供給の関係から株価が下がるのは自然の理に他ならない。なぜ株価が不安定化し上値が抑えられ、むしろ低迷しているのか、株価の下落がもたらす結果とあわせ、「政府」税調にはしっかりと考え直してほしいものだ。税率上げて2倍にすれば他に影響を与えずに税収も2倍になるという、単純計算で物事が片付かないことは、『信長の野望』や『三國志』をはじめとしたシミュレーションゲームのプレイヤーですら分かることなのだから。
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(最終更新:2013/08/24)
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