静電気で害虫を貼りつきシャットダウン! 害虫退治の新技術をカゴメ(2811)や東亞合成(4045)などが開発
2006年11月16日 12:30
【カゴメ(2811)】と【近畿大学農学部】の豊田秀吉教授の研究室、【独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所】などは11月15日、農作物の害虫を退治するのに静電気を用いる技術を開発したと発表した(【発表リリース「施設栽培における静電界を利用した病害虫侵入防止技術」】)。低コスト、減農薬栽培などさまざまなメリットが期待できるとして注目を集めている。
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これはガラスハウスなどによる密封性のある農作物を育てる場所において、換気用の窓に電極棒のさくを取り付け電場を生じさせ、その静電気で小さな虫や病原菌を吸い寄せる仕組み。プラ板製の下敷きを髪の毛でこすると静電気が発生して消しゴムのかすや髪の毛そのものを引き寄せる実験は誰もがしたことがあると思うが、あの原理を応用して虫など農作物にとって害をなすものたちを引き寄せるというもの。
具体的には銅線を塩化ビニールなどの絶縁体で包んだ電極棒に電圧をかけて静電気を発生。この現象を「誘電分極」と呼ぶが、この現象を利用するというもの。電気代もほとんどかからず、感電の心配もないという。
電力を使って害虫を引き寄せる方法としては、蛍光灯などを外につけて「光に引き寄せられる習性」を利用して虫を駆除するというものがあるが、これはあくまでも「虫たちの本能」によるもの。今回の方法では静電気によって強制的にひきつけてしまうことから、大きな成果が期待できる。
また、単に害虫だけでなく、粉塵やハウスダスト、さらにはスギ花粉などの補足も(静電気によるものなので)論理的には可能であるため、密閉式の農作物を育てるガラスハウス以外に、住宅や病院、食品製造・加工工場などでの利用が想定できる。
グループではこの方法について特許を出願中である(特願2006-036509)。また、菌が飛びやすい強風下での成果が確かめられれば実用が可能であるとし、今後も実験を続けていくとのこと。
特許庁のデータベースによる今件の技術に関する説明は次の通り。
【課題】 空気中から効率良く植物病原菌の分生子および菌体等を除去できることおよび放電等によりオゾン発生がないことから、植物に対して障害を与えることなく植物病害の発生を防止することができる方法を提供する。また、植物病原菌の胞子等及び/又は小害虫等の飛動可能な生物に静電界を印加して、飛動可能な生物を的確に捕捉することができる飛動生物除去装置及び植物保護装置を提供する。
【解決手段】 飛動可能な生物に対して誘電分極による静電界を印加する。
これによると放電などによるオゾン発生がないことから、農作物によくない影響を与えないこともメリットのひとつであることが分かる。
今後「静電気の力で強風下における虫や菌が除去できるのか」という検証を重ねる必要があるだろうが、非常に分かりやすく、しかも単純明快で安全(と思われる)方式であり、期待が出来る。大きな虫は金網などで物理的に侵入させないようにすればいいのだから、合理的な機器が作成できることだろう。
なお特許庁のデータによれば、今技術を出願したのは【東亞合成(4045)】となっている。今後今技術による機器が商品化された暁には、同社が生産することになるのだろう。電話で確認したところ、研究に携わっていることは事実であるとした上で、「現段階では」具体的なコメントは出来ないということだった。
ともあれ、今技術の開発の進展に期待したいところだ。
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