「YouTubeへのリンク集」は合法か否か、法律家の解釈などをチェック……上編

2006年10月28日 12:30

【IT Media】において、非常に興味深く今後論議の対象となるであろう記事が展開されていた。先日の買収劇でさらに話題に登るようになった、動画投稿サイト【YouTube】に関する日本国内の法律家の見解である。弁護士と大学助教授によるものだが、専門家の意見・解釈として注目に値する内容といえよう。

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最近では新システムを導入するなど、特に著作権の面において法的に問題がありそうな動画を逐次削除する方向で進んでいる。が、それでもYouTubeにはいたちごっこの形で多種多彩な、主に著作権法上首を傾げざるを得ない動画、すなわち「問題児」的動画が日々アップロードされている。そしてYouTubeにはそれらも含めた投稿動画へ簡単にリンクできるタグが配信され、誰でも自由にブログパーツの形でサイトやブログに引用ができる。

さて、その「問題児」的動画にリンクを張るサイトは法的に問題はないのか、というのが今回参照した元記事のテーマだ。詳しくは元記事で確認してほしいが、著作権問題に詳しい小倉秀夫弁護士は

・「問題児」的動画へのリンクは、故意であれば合法とはいえない。
・ただし少人数への告知は「私的使用の範囲」に該当すると考えられる。


という見解を述べている。また、報道や批評、研究のために「引用」として用いることが認められている点をあげ、「明白に引用目的なら許容される可能性はある。ただしその元作品の各種データについて明記をし、出所を明らかにする必要がある」とも付け加えている。そして「君子危うきに近寄らず」ではないが、「問題児」っぽい動画があれば触れないのが良いだろうとしている。

元記事では指摘していないが「少人数の集団に対しての告知ならば私的利用の範囲と解釈できる」という点は非常に興味深い。「少人数」の定義・解釈に諸説が生じるのは間違いないが、それを差し置いても、会員制サイトやSNS内であれば「問題はなさげだな」と判断できることになるからだ。もっとも、例えば【mixi】のような会員数500万人超のSNS内で公開し、「私的使用の範囲だ」と主張するのは無理がある。

もっともそのmixi内で「登録制のクローズドなコミュニティ内で公開するとしたら?」、という疑問点も沸いてくる。これはどうなのだろう。もし法的にクリアできるとすれば、少人数限定のクローズドコミュニティが作れ、YouTube動画をアップロードできるような包括的SNSサービスはニーズがあるかもしれない。

さらに興味深いのは、後半に登場する法政大学社会学部の白田秀彰助教授による見解。現行法ではYouTubeの人気コンテンツの多くは著作権法上問題があり、それへのリンクもリスクがある、判断できないなら利用すべきではないとした上で、

「法律の解釈から導かれるこの結論は、GoogleやYouTubeの時代にふさわしいものではないと考える。新しい流通手段の可能性を封じることばかりに躍起になっていては、日本のコンテンツ産業がアメリカの先進サービスに支配されるような構造に陥ると危ぐする」
「YouTubeが家庭用ビデオデッキと同じポジションにいるならば、法律や政府がよってたかってつぶしにかかるというのが、長期的に見てどうなのかな、と思う部分もある」


と、現行法の限界を指摘し、ビデオデッキが登場した際にテレビ業界・映画業界が猛反発した時の状況になぞらえて「規制一本やりでよいのか」と疑問を投げかけている。

先の小倉弁護士も「日本のテレビ局は、放送波が届く範囲を超えて番組が見られるということをとても嫌がる」とし、日本の現状には悲観的である。氏の「テレビ局は、番組がいつどこで見られるのかをコントロールしたがっている」という言葉が印象的でならない。


■一連の記事:
【「YouTubeへのリンク集」は合法か否か、法律家の解釈などをチェック……上編】
【「YouTubeへのリンク集」は合法か否か、法律家の解釈などをチェック……下編】

(最終更新:2013/08/25)

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