「TV CMはもう駄目なのか」、だとしたら「なぜ」なのか、そして「ライバルたるインターネットとどう付き合うべきなのか」

2006年10月21日 12:30

インターネットイメージ【Japan.Internet.com】に、最近上場を果たしたSEO会社【アウンコンサルティング(2459)】による興味深い記事が掲載されたのでその覚え書き。主旨としては「テレビとそのCM(コマーシャル)がその求心力を減らしている事実があるが、それはどうやらネットのせいらしいという風潮があるけども……」というもの。

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この記事に限らず「テレビがつまらなくなった」という声はここ数年の間よく耳にするようになった。「面白くない」は「見るに値しない」であり、それは視聴率の低下をもたらし、テレビへの露出効果の低下に結びつき、「テレビCMの影響力の低下」という結論に結びつく。タイミングを逸して記事にはしなかったが、【トヨタ(7203)】がアメリカのテレビ界に向けて行った施策【印象に残らない番組は駄目だ(NIKKEI NeT)】が顕著な例といえる。

元記事でもいくつかのリサーチデータを例に挙げ、まずは「メディア界の王者たるテレビの地位がゆらぎ、インターネットがその代わりを務めつつある」という状況を説明。そして同時に「テレビの人気低下はインターネットによるものなのか、テレビとネットは対立軸でのみ語られるべきものなのか」という問題提議をしている。

【任天堂(7974)】のファミコンが大ブームとなった時、テレビ界からはテレビゲームが何かとつけてバッシングの対象になった。それこそ声を挙げて語られることこそ無かったが「中の人」の話では「テレビを見る時間をゲームで遊ぶ時間にとられてテレビの影響力が低下する。それにファミコンはテレビに接続するから、テレビを占拠されてしまう」という認識がテレビ業界の、特に上層部にはあったようだ。

元記事でも「テレビ接触時間の減少とインターネット利用時間の増加は因果関係として決して否定できないが、インターネット人気の高まりがテレビ人気低下の決定的要因になったとは到底考えられない」と前置きした上で、「テレビ人気低下の最大の原因は、インターネット人気の高まりではなく、テレビ業界自身がもつ構造的な問題ではなかろうか」と仮説を立てている。簡単にまとめると「自分の問題を人のせいにするな」、ひとことで表現すれば「鏡を見ろ」ということなのだろう。

企業のプロモーション活動においては
テレビとインターネットという対立軸で考えるのではなく
共存する方法、お互いがお互いを高めあっていく方法を
考える方がスマートではないだろうか
……アウンコンサルティング:片山麻依子

テレビとインターネットという対立軸で考えるのではなく、共存する方法、お互いがお互いを高めあっていく方法を考える方がスマートではないだろうか

そして元記事では「テレビのブランド力、影響力は今でも健在。だから敵対するのではなく、ネットの良いところとインターネットの良いところを巧みに組み合わせて活用し、相乗効果を生み出すべく働きかけるべきではないか」としている。いわば「対立思考ではなくWin-Winの関係を生み出すべく努力しよう」という考え方だ。詳細な解説は元記事にあるので、ぜひ一読してほしい。

間違いなくインターネットとそこから産み出されるさまざまな表現方法は、新たな広告・情報配信媒体となり、それらは既存メディアであるテレビとは別のもの。そして新しいものが生み出されれば必ず既存のものとの対立構造がおきうるもの。特に旧勢力側からの反発が大きい。現状維持の体制を崩されるかもしれないし、既得権益を奪われる可能性もあるからだ。

しかしその特定分野で自分の体制維持と権益の確保にこだわっていても、周りの世の中が動くのを押しとどめることはできない。気が付くと自分とその周囲だけが旧態依然の状況となって取り残され、取り返しのつかない状況になってしまいかねない。……はて、ここに「OS」とか「パソコン」とか「検索エンジン」とか「パソコンゲーム」とかいうキーワードがあるが、これはいったいどういうことだろう(謎かけ)。

それはともかく。目を閉じていても何も変わらないし前にも進めない。ましてや気が付くといつの間にか流れに取り残されてしまうかもしれない。テレビとテレビCMけんか腰になって相反したり対立したり何かと工作をして邪魔するのではなく、積極的に利用し、活用し、相乗効果を生み出すよう工夫をして、テレビとネットのお互いがよりよい方向に向かえるようアプローチをかけるべき時に来ているのだろう。

実際、当方がかつて「ケータイコンテンツの中の人」だった時、情報配信メディアとしては最前線の携帯電話に携わるものとして現場の状況を見ていても、テレビやラジオ、雑誌といった既存メディアのパワーの恐ろしさ、力強さの実体をまざまざと見せ付けられた。同時に、色々な工夫をほどこさないとそのパワーも尻つぼみしてしまうし、うまく使いこなすことで相乗効果を生み出し、関連する人たちみんながにっこりできるような「仕組み」を作れることも経験として学ぶことができた。やればできるのである。

ただ、これには絶対的な成功方程式はないので試行錯誤が必要だし、金も時間もアイディアも発想も新たに投入する必要がある。新しいことでもあり、「はじめの一歩」には勇気も必要だろう。だからといって「面倒だから」「いまのままでもそれなりにトントンなのだから別にいいじゃん」「新しいものは目障りだからつぶしてしまえ」では、怠慢以外のなにものでもないし、視聴者から「テレビって最近面白くないよね」「劣化してるよね」と見透かされても反論する余地はない。

個人的にも色々なメディアを使った情報配信やコマーシャル手法には興味がある。方法論を考えるのも楽しい。技術も資金もコネもないので(笑)できることは限られるが、こんなことも出来る、こんな方法が紹介されている、というもの、当方が四苦八苦しているありさまを今後も折を見て御披露するつもりだ。読者の皆様にとって少しでもプラスになれば、それだけで満足であるし、ご意見をいただければそれこそ「Win-Winな関係」となれるだろう。

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