ロイター通信がネットゲーム「Second Life」内に支局を設立~2
2006年10月17日 19:30
『ロイター通信がネットゲーム「Second Life」内に支局を設立~1』からの続き。ロイターが多人数同時参加型ネットワークゲーム【Second Life(セカンドライフ)】に支局を設立したその目的などについて説明したが、実際にはどのようにサポートをし、記事を送り出しているのだろうか。
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ロイターでは自局サーバ内に【Second Life専用のサブドメインを設けて情報の配信を行う公式サイト「Second Life News Center」】まで設置し、相互情報の橋渡しを行っている。このサイトではゲーム内通貨の「Linden Dollar」とアメリカ通貨のドルとの交換レートがチャート・出来高の形で表示されるなど、経済面でも相当に力が入った構成となっている。
「Second Life」内ロイター支局サイト。通貨交換レートがチャート表示されるなど本格的なもの
記事内容も現実世界におけるレポートと、『Second Life』におけるそれを同等にとらえた形で行っており、一部ではインタビューの音声まで公開している。たとえば【INTERVIEW: Philip Rosedale on the Grameen Bank】の記事では
ロイター・アダム記者によるレポート
Second Life内、10月16日(ロイター)
LindenのCEOであるPhilip Rosedale氏はバングラデシュ銀行がパイオニア的存在として実施している、少額貸付による社会救済制度がSecond Lifeでも参考にされ、同様のモデルとして実施される可能性についてコメントした。
ちなみにこのインタビューが行われた直後、バングラデシュのGrameen銀行とそのMuhammad Yunus総裁はこの貸付制度が評価され、ノーベル平和賞を受賞している。
(By Adam Reuters
SECOND LIFE, Oct 16 (Reuters) - Linden Lab CEO Philip Rosedale talks about how the social lending pioneed by the Bangladesh microfinance organization may one day work in Second Life.
Shortly after this interview was recorded, Grameen Bank and its founder Muhammad Yunus were awarded the Nobel Peace Prize. Read the full story here. )
という本格的なインタビューが掲載されている。しかもそれが、ゲーム内と現実世界とを巧みにリンケージしたものであるだけに、画期的なものに他ならない。今記事ではバングラデシュにおける、貧困層へ少額の貸付を行って経済的自助努力をうながそうという試みをモデルとし、運営側の会社であるLinden社が似たようなシステムを『Second Life』内でも行おうと考えているというものだ(【参照:NIKKEI NeT】)。
昔から多くの人が参加している多人数同時参加型ネットワークロールプレイングゲームでは、プレイヤー有志による、あるいは運営会社のスタッフによって、通信社や情報局などが設立され、サイト上で情報の配信が行われている。しかし有志のそれはあくまでもボランティア・趣味的な範囲に留まり、運営会社のはやもすると通常のメーカー情報の域を出ないものとなってしまう(演出をいくらしても「運営側」という立場の壁は大きい)。
今回ロイターが立ち上げた「支局」は、開発・運営側ではない第三者の立場におけるものであり、実世界での支局と同様の視点から情報の相互配信ということを行う意味でも、非常に興味深い。そして同時に、これまでに無かった流れを産み出すことだろう。
これはひとえに『Second Life』が経済システム的にしっかりとしたシステムを採用しており、自由度が高く、ビジネス的にも色々な可能性が見出せるものであるからに他ならない。単なるゲームという領域をはるかに飛び越え、本当の意味での「バーチャルワールド」の形成に成功しつつある、そしてVWB(Virtual World's Business……仮想世界のビジネスの略、今作った造語)が成り立つものであるからこそ、ロイターも支局を設立する意義があると判断したのだろう。
ちなみにロイターの記事によれば、『Second Life』では90万人以上のユーザーが登録し、アメリカドルで1日35万ドル、1年で1億3000万ドルの金額がやり取りされる。そして現在でも毎月二桁の割合で成長を続けているという。
文頭では「異例中の異例」と表現した今回のロイター通信の支局開設。今後の展開次第では「稀有な出来事」ではなく、他社が追随する中での「はじめの一歩」であり、ロイターはその動きの先駆者ということになるのかもしれない。
日本でも『Second Life』そのもの、あるいはそれに匹敵するタイトルでもよいが、が登場し、情報配信の「支局」設立がビジネスとして成り立ちうる場を提供してくれないだろうか。それこそ数年来『ウルティマ オンライン』をプレイしてからずっと思っていることでもあるだけに、今件はうらやましい話でもある。
■一連の記事:
【ロイター通信がネットゲーム「Second Life」内に支局を設立~1】
【ロイター通信がネットゲーム「Second Life」内に支局を設立~2】
(最終更新:2013/08/25)
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