身体は大きくなっても運動能力が低下、文部科学省の最新データをチェック

2006年10月15日 18:00

運動イメージ先に【生活習慣の変化が体力に影響、子どもの運動能力の低下傾向あり】で報じた、【文部科学省】による体力・運動能力調査結果の最新版(2005年度版)がようやく一般公開された(【体力・運動能力調査(承認統計)】)。そこで、公開前に報道された各種データが正しいかどうかを検証したついでに、簡単にではあるがその内容について気になるところを抜粋して箇条書きにまとめなおしてみた。ひとことで表現すれば「概要のまとめ」みたいなものだ。なお「歳を経るにつれて体力が低下している」という当たり前のことについては省略させてもらった。

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●幼年期においては運動能力が全般的に低下している

持久走の年次推移
持久走の年次推移

過去のデータと比べると同年齢期の運動能力の低下が見て取れる。特に持久力、跳能力はその傾向が著しい。成年に達すると反復横とびについては向上しつつあるものの、急歩については下降気味。持久力・耐久力、つまりは「こらえ性」がなくなってきたと見るべきか。

●青年時の体格は向上、運動能力は低下

20年前との基礎的運動能力及び体格の比較(11歳)
20年前との基礎的運動能力及び体格の比較(11歳)

身長・体重共に向上の傾向は見られるが、一方で運動能力は低下しつつある。当方も幼いときは「図体ばかりでかくなって」(てんで運動はだめだ)と言われたものだが、それを地で行くようなデータが出ている。

運動・スポーツの実施頻度別基礎的運動能力の比較と低下率(11歳)
20年前との基礎的運動能力及び体格の比較(11歳)……「毎日」とは「ほとんど毎日(週3日以上)」、「ときどき」とは「ときどき(週1~2日程度)」、「ときたま」とは「ときたま(月1~3日程度)」運動をする者で、「しない」は運動を「しない」者をいう。


この傾向は運動の頻度に関わらず、ではあるが、運動を普段からよく行う子どもたちは、運動能力の低下が最小限に抑えられているようだ。

運動・スポーツの実施頻度の割合の比較(11歳)
運動・スポーツの実施頻度の割合の比較(11歳)

そして運動をする頻度そのものも低下しており、結果として運動能力の低下が数字となって現れてきていることが分かる。流れとしては「体格は向上しているが、運動を面倒になってしなくなる」「身体が鍛えられなくなる」「運動能力が低下する」ということになるだろう。

●朝食抜きは身体に悪く運動能力にもマイナス

朝食摂取状況別20メートルシャトルランの折り返し数(6歳~17歳)
朝食摂取状況別20メートルシャトルランの折り返し数(6歳~17歳)

朝食を採る、採らないの問題は当サイトでも何度と無くお知らせしてきたが、朝食を採らないと運動能力が低下するという検証データも出ている。20メートルシャトルラン(往復持久走)の実測データでも、朝食を食べた子どもに比べ、食べない子どもが低い数字を出しているのが明らかになった。

●寝る子は育つが寝すぎは注意

1日の睡眠時間別20メートルシャトルランの折り返し数(6~17歳)
1日の睡眠時間別20メートルシャトルランの折り返し数(6~17歳)

睡眠時間と運動能力の関係については少々面白い結果が出ている。「十分睡眠をとった方が身体が休まるから体力もつき運動能力も高まるのではないか」と考えがちだ。計測データでも一部年齢ではそのように出ているのだが、男女共に14歳から15歳を境目にして「8時間以上寝た」方が運動能力が低いという結果が出ている。これは単純に「寝すぎ」ということなのだろう(笑)。個人差もあるが、13歳から15歳を境に睡眠時間を少しずつ減らし、6~7時間程度にした方が、統計データ上は効率的であるということだ。

●テレビの見すぎは良くない

1日のテレビの視聴時間別20メートルシャトルランの折り返し数(6~17歳)
1日のテレビの視聴時間別20メートルシャトルランの折り返し数(6~17歳)

男女とも12歳から13歳以降になると、テレビの視聴時間が長くなればなるほど、運動能力が低下する傾向にあるというデータが出ている。特に14歳以降はその傾向がいちじるしい。「直接テレビが影響する」のか、それとも「テレビの視聴時間により運動や睡眠時間などが削られているから」なのかまでは分からないが、過ぎたるは及ばざるがごとし、ということなのだろう。


再度おさらいしてみると

・子どもの体格は向上しているが運動能力は低下している
・朝食抜きは身体に悪い
・寝る子は育つが寝すぎは注意
・テレビの見すぎは良くない


ということになる。まとめてみると「何を当たり前のことを」という感じになるが、データを元に検証した結果なのだから重みも違ってくるはずだ。

ちなみに成年・高年齢期のデータでは、「運動している、スポーツクラブに入っていると体力は高い」「過去に比べると運動能力は増進している」などのデータが出ている。また、運動をする頻度が低ければ低いほど、「自分は健康でない」と自分自身のことを分析しているようすもうかがえる(【健康状態に関する意識別新体力テストの合計点】)。自分は不健康でその理由は運動不足にあると分かっていながら対処しない、できないようすが分かる。

ちなみに、文部科学省でのデータ公開に先立ちマスコミに資料が配られ報じられた際に、一部報道で語られた「テレビゲームのし過ぎで体力が低下している」云々という話はどこにも見受けられなかった。テレビの視聴時間が体力低下と関連性があるデータは存在したが、それが直結しているかどうかはこのデータだけでは判断できない。

運動不足は不健康だということを自覚しても、運動が出来ないというのがデータからのひとつの結論だ。それではたとえば「毎朝30分早く起きてジョギングする」とか、「一駅手前から歩いて登校する」というように、手短なところから運動する機会を増やしてみてはいかがだろうか。習慣に組み込むことができればしめたもの。黙っていてもその時間になると身体が動き出すに違いない。

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