東証の次世代システム計画概要書から、一般投資家への影響をチェック
2006年10月04日 12:30
先に【東証、次世代システム稼動に伴う制限値幅見直しを正式発表】でも報じた、【東京証券取引所】が2009年後半の稼動に向けて計画中の次世代システム。これにともない9月26日に【計画概要書の要旨(PDF)】が発表された。ここで改めて内容を斜め読みし、気になる点をピックアップしてみる。もちろんこれらの内容はあくまでも「計画」であり、決定稿でないことにご注意されたい。
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概要書は要旨であるためかわずか5ページでまとめられており、具体的な内容は2ページ以降なので実質的にはわずか4ページ。だがそれらのページには結構気になるものがいくつか記述されている。東証側の事務手続きなどはとりあえず関係ないので(とはいえ将来誤発注でも発生すれば、「この時の仕様変更が問題だったから」という話にでもなるのだろうか)省略する。
■1)取引制度・慣行面見直し
「同時呼値の配分ルールについて見直し。半日立会については業界全体のシステム運用等の軽減の観点からも廃止」とある。後者はせいぜい年二回なのにそんなに負担が大きいのだろうかと疑問視したくなるが、現場サイドとしてそのような意見があるのだから仕方あるまい。前者の配分ルールは、全部まとめていっぺんに配分し、手間を減らそうというもくろみ。
■2)取引制度の見直し
これが今回のメイン。
●呼称の刻み
株価によっては1ティックが1%近くになる場合があり、バランスが取れていないとの指摘が多いため、細分化する。たとえば現行で10万円台は1000円刻みなのを100円刻みにする。「値が飛び跳ねる」現象を避ける狙い。
●制限値幅・特別気配の更新値幅等
株価によって制限幅がアンバランス。拡大してほしいという要望にも答える。若干拡大する方向で変更するが、気配の更新時間は変更しない。たとえば現在700円~999円の価格帯の制限値幅は100円だったのを150円にする。
●始値決定・ストップ配分時の合致要件
今までは ①成行及び優先する値段での呼値の全数量 ②成立値段の呼値の一方の全数量 ③もう一方の最低単位以上が合致する値段で約定成立という形だったが、このうち③を撤廃する。これまでは「ストップ配分時には、各取引参加者に最低単位以上の配分が行われない場合は約定不成立」だったのが、「最低単位以上の反対注文があれば約定成立」となり、ストップ高・安の際の「売買成立せず」の可能性が低くなる。
■3)市場情報の配信
今回の計画のもうひとつのメイン。
●市場情報の取扱い
これまでは「一般……売り買い上下5本」「取引参加者……全板情報」の2系統で板情報を配信していたが、これを1系統に統合。「一般」「取引参加者」双方にすべての板情報をリアルタイムで配信する。つまりこれまで「5枚の板の上下には”大人”たちの板が右往左往してるんだろうなぁ」とやきもきしながら相場に立ち向かうしかなかったが、今後はすべての板を見ることができるようになる。
大証銘柄などの「売り買い各8枚ずつ」の板情報でも十分という意見が多い中、全板情報を提示しても「無駄に情報過多になるばかりでは」という意見も無くない。とはいえ計画にもある「取引参加者と一般の間の情報格差をなく」という主旨は賛美するべきものであり、この計画が実働されることを望みたい。
というわけで、東証の次世代システム構築にともない、一般投資家のレベルではどんな影響が出うるのかをざっとまとめてみた。1ティックや値幅制限の変更は特にデイトレーダーには投資スタンスに少なからぬ影響を与えるだろうし、板情報の全面解禁は「分析屋」の活躍の場が増えるに違いない(どのように表示するのかが気になるところだが)。
2009年のシステム実働まで、さまざまな変更が加えられるだろうが、投資家らのやる気をそぐことのないよう、「改善」を推し進めてほしいものである。
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