吉野家(9861)、牛丼専門店と複数メニュー店へ
2006年10月14日 08:30
牛丼の【吉野家(9861)】は10月12日、従来の牛丼店を「牛丼専門店」と「複数のメニューをそろえる店」に分離、業態別に事業を展開する社内カンパニー制の導入を検討していることを明らかにした。アメリカ産牛肉の調達量が充足してから着手。さらに地域別の分社化も含め来年の春までに検討を重ねるという。屋号は「吉野家」のままだが、外装で外観に特徴を持たせ、お客にはひとめで分かるようにするとのこと。
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「牛丼専門店」と「複数メニュー店」は見た目だけでなく店舗の構造も変える。前者はカウンター席、後者はテーブル席を中心とし、複数メニュー店ではこれまでカバーしきれなかった家族連れや女性の来場者増を目指すという。社内カンパニー制を導入して事業・店舗形態を2本立てとすることで事業の多様化、リスクヘッジをはかる。
今件についてはすでに北海道内の20店舗を両タイプにわけた形で実験中。牛肉の輸入量の増加と共に牛丼の常時発売が出来るようになれば(来年以降の見通し)店舗の形態分けをはかり、改装も進めるという。傾向としては「牛丼専門店……街中、一人の来店が多い」「複数メニュー店……郊外店舗」となるが、現在の実証実験のデータを元に総合的に判断するとのこと。イメージ的には【モスバーガー(8153)】の「赤モス」と「緑モス」の違い(【解説ページ】)のようなものだろうか。
アメリカ産牛肉の輸入が差し止められていた時期、吉野家は豚丼や各種定食の開発を推し進め、「牛丼一筋」の魂を維持しつつもさまざまな新メニューを世に送り出していった。今回の「2本立て構想」はこれらの開発蓄積を活かした、大規模な経営戦略の転換とも受け止められる。
最近メイン事業一本では今後の成長に期待が持てないということから、あるいはリスクヘッジの意味で、本事業の派生型としての新事業を展開する外食産業や小売業のアクションが色々と目に付く。たとえば【ローソン(2651)、お年寄り向けコンビニ拡大の方向へ】で報じたように、【ローソン(2651)】は100円ショップスタイルのコンビニや老齢層向けで地域密着型のコンビニのスタイルを新事業としてスタートし、次第にその数を増やしつつある。
これまでかたくなに「牛丼はあくまでもアメリカ産牛肉」というポリシーを守ってきた吉野家。そのポリシーは維持しつつも、輸入休止の際に得た副産物を元に、提供するスタイルのポリシーを変え、「新しい吉野家」に姿を変えつつあるようすが見受けられる。来年以降には「ニュー吉野家」のスタイルを見ることができるかもしれない。大いに期待しよう。
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