「共存を」40.40%、「閲覧するだけなら抵抗感ナシ」45.14%~動画投稿サイトの意識調査結果
2006年10月29日 19:30
先に【「YouTubeへのリンク集」は合法か否か、法律家の解釈などをチェック……上編】で【YouTube】などの動画投稿サイトにおける問題点を法律面などから指摘した記事へのチェックをしたが、それと関連付けられる調査結果がライブドアの【BizMarketing】で発表された。それによると動画投稿サイトにアップロードされている動画について、「閲覧するだけなら違法コピー映像に対する抵抗感ない」45.14%、「一方的な削除ではなく『共存』を求める」40.40%といった現状を追認するような結果が得られたという。
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今調査はポータルサイトとしてのライブドアのユーザーに対して8月24日~9月13日の間に行われたもので、1269件の有効回答数があった。年齢層は30代が32.89%ともっとも多く、20代から40代で全体の約8割を占める。
CGM(Consumer Generated Media、利用者自らがコンテンツを形成し成長していくタイプの仕組み、ネット上のサービス)の代表として語られることが多いYouTubeなどの動画投稿サイトだが、このようなサイトの訪問経験者は過半数の56.13%におよび、「知っているけどアクセスはまだしていない」という人を合わせると8割近い数字を出した。昨今の買収騒ぎが大きく報じられていることから、今ではこの数字はさらに伸びているものと思われる。
また、動画投稿サイトは数多く存在するが、それらのサイトの中で「YouTube」にアクセスした人は9割を超える92.11%を占め、第二位の30.0%をはるかに超える絶対的な認知度を持っていることが分かる。
また、「動画投稿サイトへのアクセスのきっかけ」をたずねたところ、
・個人のブログやSNSの記事……51.48%
・ニュースサイトの記事……46.26%
・コミュニティ以外の掲示板などからの情報……22.85%
という結果が出ている。要はネット上の口コミが加速度的に普及をうながしたといえるだろう。また元データでは指摘していないが、YouTubeが動画をブログやサイトに貼ることができる「タグ」をブログパーツに近い形で配信し、ブログで日記などを書いているネット初心者でも気軽に使えるような「仕組み」を用意したのも、「ネット口コミ」を加速させた一因といえよう(さて、当サイトはブログとニュースサイト、両方に属するのだろうか:P)。
気になる法的問題に関する意識だが、
「他人が投稿したものを観るだけなので、特に抵抗感はない」……45.14%
「(著作権侵害に対して)閲覧することに抵抗感を覚える」……24.82%
「閲覧したくない」……12.09%
となり、「問題児的動画」であることが分かっても、「見てるだけ~」のテレビCMではないが視聴しているだけなので抵抗感を感じていない人が多い。また、「よく分からない」という回答も14.70%あり、今件についてはいまだかつて無かった状況でもあり、解釈がつくにくいことが推定される。
また昨今では日本の放送局などが申請を行い、問題のある動画約3万件を一斉に削除させるなど、コンテンツを削除させようという動きが活発になりつつある。放送事業者やコンテンツ制作業者らによるそのような動きに対し、どう思うのかと問うたところ、
「共存共栄の方法を考えるべき」……40.40%
「ユーザーの利便性を考えずに、削除を求めるのはおかしいと思う」……23.72%
「既存ビジネスを守るためであれば致し方ない」……20.32%
「クリエイターや著作権者の利益を守るためアップロードしたユーザーは制裁を受けるべき」……16.05%
となり、奇しくも先の記事で小倉秀夫弁護士や法政大学社会学部の白田秀彰助教授が語っている「反発ではなく共存を模索すべき」という意見が多いことが分かった。もっとも、度の過ぎた行為については「しかるべき対処をしなければならない」という意見もかいま見ることができよう。
今回の調査や先の専門家の意見だけで「民意はこうだから放送事業者やコンテンツ制作業者は再考せよ」という強硬な意見に結論付けるのは早急だろう。ただ、ネット事業やインターネットコミュニティでよく言われている、そしてYouTubeの登場で一層明らかになった口コミ戦略こと「バイラル・マーケティング」や、ネット上の口コミという意思表示方法などの動きを押しとどめるのは難しいのではないかな、という気がしてならない。この動きを「諸般の事情」だけで押しとどめようとすると、それこそ先の記事の指摘ではないが、「黒船がやってきておいしいところを全部持って」いかれてしまいかねない。
最近テレビアニメの放送も始まった、集英社の雑誌で連載中の漫画『バーテンダー』で、先日掲載された号に「サイドカー」というカクテルのエピソードとして次のような話が紹介されていた。
「人って美味しい物に出会うと好きな奴と一緒に味わいたくなるだろ。
だから美味しいカクテルに出会うと、思わず手にしたグラスを好きな人の方に向けちまうのさ」
漫画の中では「サイドカー」について語られたもの。だがこれは「サイドカー」に限らず、美味しい食べ物、そしてそれ以外の色々な商品についてもいえるだろう。誰にも頼まれたわけではないけれど、とろけるような舌触りを持つ食べ物や、心が張り裂けそうになるような想いを体験させてくれる映画、人生の友にしたいくらいな感想を持たせてくれた書籍、徹夜してでも一気に解きたくなるようなゲームなどは、ついつい自分の身近な人に話して、薦めてみたくなるものだ。
ネット上の口コミ、そして「YouTube」における投稿動画の伝播普及も根ざすところはこの「人間が元来持っている衝動・感情に素直な行動」にあるのではないだろうか。そして投稿動画特に「YouTube」はたまたまそのツールとして使いやすく、分かりやすく、教えやすいものだったからこそ、あっという間に広まったのだろう。
アップロードされているテレビなどのコンテンツなどもそのほとんどは、「これ、すごいよ、みんな見てよ」という意図によるもの。それを単に「利益を損なうから」「法的に問題がありそうだから」として片っ端から否定していたのでは、せっかく個々の心の中に生まれた「面白い!」「他人に勧めたい!」という素直な、そしてコンテンツ制作事業者などにもプラスとなる「想い」まで否定してしまうのではないだろうか。
何らかの妥協点、解決作を模索しないと、せっかくの想いもたち消えてしまい、チャンスを逃してしまうだろう。中長期的にマイナスな結果を導いてしまうかもしれないことに、気が付くのはまだ遅くないと思われるのだが。
(最終更新:2013/09/15)
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