豚肉のトレーサビリティー、導入五か月で「トン」挫
2006年09月19日 07:00
【asahi.com】によると食品の生産や理由通の履歴を消費者が確認できる「トレーサビリティー(生産履歴管理)」制度の導入を促進するための国の補助事業で、国からの補助金を受けてシステムを構築した「山形県豚肉トレーサビリティ協議会」(山形市)が、販売不振などからその稼動を事実上停止していたことが明らかになった。これは会計検査院から「システム導入の目的を果たしていない」との指摘を受けてのことで、今後約5670万円の国庫補助金の全額あるいは一部の返還を求められる可能性もあるという。
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トレーサビリティは【外食産業で産地表示の動き拡大】にもあるように、ここ数年の間に急速に広まりつつある仕組みで、精肉売り場などで値段や商品名のプレートに何桁もの数字が表記されるようになったのがその普及の表れ(固体識別番号を公開し、その肉の履歴を明確化している)。
今回会計検査院から指摘を受けたのは「トレーサビリティ導入促進総合対策事業」。消費者が携帯電話を使って店頭で豚肉の肥育、加工、衛生管理状況を検索出来る仕組みを開発。バーコード認証システムの構築やラベル発行装置、読み取り装置の購入費として約1億円を計上し、うち約5670万円を国が負担した。
同協議会によると、システムは2004年10月から稼働したが、対象商品は売れ行きが悪く、2005年3月には販売を中止。畜産農家が肥育状況を記録する機器をうまく使いこなせないことなども重なり、導入した機器を動かすのをやめた。現在まで1年以上事業は停止しており、改善のきざしもなく、会計検査院では「導入機器の有効活用は困難」と判断した。
【農林水産省の予算請求資料(PDF)】によると、トレーサビリティシステム導入促進対策事業には(開発事業の4億円を別にしても)全国・全食品規模であわせて18億6600万円もの予算が請求されており、今回の山形県の「山形県豚肉トレーサビリティ協議会」もその一部を用いている。
同協議会は、食肉加工会社「ヤガイ」を中心とした県内の生産者らと、スーパー【ヤマザワ(9993)】で構成。ヤガイは朝日新聞の取材に対し、「補助金の返還を求められれば協議会として応じることになるだろう」と話している。県エコ農業推進課も「検査院と調整中だが、協議会が自主的に補助金全額を返還することもあり得る」という。
今予算については千葉県で協議会会長が補助金のほぼ全額を自分の借金返済に流用したことが判明し、全額を県が返還したケースがあるなど、有効に使われたとはいいがたい状況が続出している。「トレーサビリティ」の考えは今後重要かつ必要不可欠となる考え方だが、現場の対応や意識が追いつかないとせっかく予算を割り振っても有効に使われ得ないという一例だろうか。
あるいはいきなり「デジタル化、ハイテク化でシステム導入」としたのが現場になじまなかったのかもしれない。急いては事を仕損じる、ということなのだろう。
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