損保の未払い新たに12万件判明、未払いは全体で160億円を超える額
2006年09月30日 12:30
損害保険各社は9月29日、保険金の付随的要件での支払いもれ問題で【金融庁】が要請していた再調査の結果を公表した。すでに大手損保では2005年の秋までに支払いもれ件数を公表していたが、今回の新規公表で総数は26万件以上、未払い額は全部で160億円を超えるものとなった。各社は追加の処分や体制立て直しの表明をしているが、金融庁によるさらなる行政処分は必至で、今後保険金支払いへの一層の監視強化が行われることになる。
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金融庁では2005年11月25日、大手損保6社を含めた26社に対し、損害保険の支払いもれが判明したことを受けて経営管理の改善や強化などを求める業務改善命令を発動(【損害保険会社26社に対する行政処分について】)。この時点で支払漏れ件数は18万614件、金額は約84億300万円。一件当たりの平均金額は、4万6000円だった(【損害保険会社の付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果について】)。
その後さらに【損保ジャパン(8755)】と【三井住友海上火災保険(8752)】で支払いもれが発覚。これを受けて金融庁では損保各社に再調査を要請。その結果今回の「損保業界全体レベルでの、さらなる保険金支払いもれ」が発覚した(【参照:金融庁、損保ジャパン(8755)に業務停止命令2週間から1か月】)。
大手6社の不払い件数と今回新たに判明した数字は以下の通り。会社によっては今回判明した分の方がはるかに多いところもある。
【東京海上日動】……6万3143/4万5380
【損保ジャパン(8755)】……2万9651/1045
【三井住友海上火災保険(8752)】……4万6819/1万9646
【あいおい損害保険(8761)】……6万8395/3万9139
【日本興亜損害保険(8754)】……3万9522/1万138
【ニッセイ同和(8759)】……1万4628/1万510
合計……26万2158/11万6858
※数は(総数/今回追加分)
山本有二金融・再チャレンジ担当相は9月29日の閣議後の記者会見で「報告内容を精査確認し、経営管理体制や支払い管理体制などを詳細に検証したうえで、支払い漏れ件数の多寡にかかわらず、内容に応じて行政上の対応も含めた適切な対応を図る」と述べ、追加的な行政処分を指示することを示唆している。
今回これだけ大量の「不払い(未払い)」がリストアップされたのには、損保における「特約」(「保険のオプション」。特別契約のことで、基本となる保険契約に追加するさまざまな契約のこと)が複雑すぎて支払い要件に該当するかどうかの判断がつきにくいという事情もある。が、それをたてに「理由をつければ保険金を払わなくても済むだろう、出て行く金額を抑えればそれだけ成績がよくなる」という思惑が、損保各社にまったく無かったと胸を張っていえることは出来ないだろう。
契約者の気持ちを裏切るこのような行為は、保険業界そのものへの信頼性を損ねるだけでなく、保険というシステムそのもののバランスを崩す危険性すら生じる。ただでさえ損保においては「条件を色々とこじつけて支払いを渋る」というイメージが蔓延しているだけに、今回の未払い問題は契約者や損保加入を考えていた人にとっては、色々と「考え直す」必要すら出てくるだろう。もちろん、損保各社にとってはよくない方向で、という意味だ。
金融庁には引き続き厳しい監視を続けてもらうと共に、損保各社においては(これまでの事を過去にさかのぼってやり直すのは不可能だから)「今後」において、今回指摘されたことを経験として刻み、二度と指導を受けることのないように善処してほしいものだ。
■関連記事:
【損害保険業界で不払い問題続発から特約再編の動き】
【金融庁、損保ジャパン(8755)に業務停止命令2週間から1か月】
(最終更新:2013/08/26)
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