夜間取引は投資家に恩恵をもたらす……ばかりではない?

2006年08月29日 20:00

夜間取引イメージ先日から何度と無く報じているように、証券取引所が閉まっている夜間でも株式の売買を一般の個人投資家が行える「夜間取引」のサービス開始への動きが加速している。先陣を切って【カブドットコム証券(8703)】では9月15日から本格的なサービスを開始する。一見個人投資家にはメリットばかりと見られる夜間取引に問題点はないのか。たまたま本日8月29日、NHKのニュースで小特集が組まれていたので、それを元に再点検をしてみることにする。

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通常の証券取引所の取引は朝9時から始まり、午前11時から午後0時半までの昼休みをはさんで午後3時で終了する(【東京証券取引所】の場合)。生業(なりわい)として取引をしているのだからお昼に行われても誰も文句はいえないのだが、通常他の仕事についている人や家事に追われている人には市場に参加しにくいのも事実。既存の夜間取引サービスとしては【マネックス証券】【マネックスナイター】などが提供されていたが、昼間の通常取引とはルールも異なり(オークション制度でないなど)「オマケ」みたいな扱いでしかなかった。

そこで今回の一連の動きでは、証券会社(単独、あるいは連合)が私設取引システム(PTS)をつくり、そこで市場取引を行おうと試みている。PTSを使った最初の夜間取引となるカブドットコム証券の【夜間取引市場】では、取引銘柄数は300銘柄・開場時間は19時半から23時まで、注文受付開始・気配表示は19時から、投資家の売り買い注文を元に売買が行われるオークションシステムなどの仕組みを用意している。昼間東証で購入した株式を夜間取引市場で売却することも可能(別々の扱いがされるわけではないということ)。

夜間イメージ今回ネット証券会社が相次いで夜間取引を提供する背景には、これまで手数料の値下げ競争で顧客を確保していたが、それも限界に近づいている。そこで証券会社では「他社と比較しての魅力の追及」の観点から、夜間取引を導入し、新規顧客の誘引と既存顧客の引きとめ、ひとことでいうと「お客さまの囲い込み」を図ろうとしていると考えて間違いない。なぜなら今のところ、各証券会社・連合体に口座を持っていないと、その証券会社の夜間取引サービスは使えないからだ。例えば【SBIイー・トレード証券(8701)】で昼間の通常取引で買った株式は、カブドットコム証券の夜間取引市場での売買はできない(もっともこれは昼間の取引でも同じなのだが)。

取引時間の延長などメリットばかりのようにも見える夜間取引。だが問題点もないわけではない。まずは「不正取引の防止」。夜間取引を行う証券会社では妙な値動き・取引に対する監視体制を強化する予定だが、どこまで実効性のあるものかは今のところ未知数。

続いて「重要発表への対応」。本日8月29日に例えると【三菱UFJ証券(8615)】【三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)】が完全子会社化するという報道が行われ東証では一時期売買停止措置がとられたが、同じように「情報周知までは売買停止措置」を実施できるかどうか。

またこれは投資家自身にも注意が必要ということだが、現状では3勢力それぞれが独自に私設取引所を開催して売買を行うこともあわせ、夜間取引はただでさえ昼間と比べると「市場」への参加者が少ないため、ちょっとした売買で「株価の値動きが大きくなる可能性」がある。カブドットコム証券の夜間取引ではその日の昼間の取引と同じ値幅制限を適用するなどある程度の対応策は採られるが、成行注文を出すと目玉が飛び出でてモニタを突き破るような額で約定してしまう可能性がある。

恐らく9月15日にスタートするカブドットコム証券の夜間取引は、色々な意味で注目を集めるだろうし、オークションシステム・私設取引所を導入した夜間取引の試験パターンとして試行錯誤が繰り返されるに違いない。また、少なからぬ個人投資家にとって投資スタイルが大きく変わる、あるいは投資戦略に新たな手立てが加わることだろう。市場の健全化と活性化を目指し、夜間取引導入を予定している各社には頑張ってほしいものだ。


■関連記事:
【イー・トレード証券(8701)の夜間取引はアメリカ市場に対応のため午前ゼロ時以降も!? 】
【カブドットコム証券(8703)、夜間取引を9月15日から開始。手数料は378(みなやかん)円】


(最終更新:2013/08/26)

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