暴力シーンによるゲームの販売規制は違憲、アメリカの連邦地方裁判所が判決

2006年08月27日 07:30

[このページ(nhk.or.jp)は掲載が終了しています]が報じたところによると、アメリカ・ルイジアナ州の連邦地方裁判所は8月25日、暴力シーンが含まれるビデオゲームの販売を規制した同州の法律は、ゲーム制作者の表現の自由を奪うものとして違憲であるとの判決を言い渡した。これによりゲームソフトの規制をめぐる議論があらためて高まるものと見られている。

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ルイジアナ州では今年6月に「暴力的なシーンが含まれるビデオゲームを18歳以下の未成年に売った場合、その業者に対し懲役1年、20万円ほどの罰金を科す」という州法を施行した。これに対しアメリカのコンピュータやビデオゲームのソフトウェア業界では「この法律はゲームソフトの制作者らの表現の自由を制限するもの。憲法違反である」とし、法律の撤廃を求め、訴えを起こしていた。

この訴えに対しルイジアナ州の連邦地方裁判所は8月25日、「暴力的なシーンが含まれるという理由だけでビデオゲームの販売を規制することは、表現の自由に反する」とし、法律は憲法違反であるとの判決を言い渡した(【訴えの主旨、英語】)。

アメリカではテレビゲームなどに頻繁に登場する暴力シーンが、少年などによる犯罪を助長しているとして州政府などがゲームソフトの販売を規制する動きが強まっている。しかし、これまでにも複数の州で同じような裁判で規制の撤廃を命じるケースが相次いでおり、今回のルイジアナ州の判決は、この流れをさらに加速するものと思われる。

今件の元記事(【AP通信の英文】)にはさらに詳しい話が語られている。それによると判決を言い渡した裁判官は

今回の法はテレビゲームの制作者や小売業者に対して、アメリカ憲法修正第一条※に定めた権利を侵害していることに他ならない(The law is an "invasion of First Amendment rights of both video game producers/retailers" and the minors who play the games.)
たとえ暴力的な描写がなされていたとしても、憲法によって完全にその権利は保護される(invasion of First Amendment rights of both video game producers/retailers Depictions of violence are entitled to full constitutional protection)"

※アメリカ憲法修正第一条:合衆国議会は、国教の樹立、または宗教上の行為を自由に行なうことを禁止する法律、言論または出版の自由を制限する法律、ならびに市民が平穏に集会する権利、および苦情の処理を求めて政府に対し請願する権利を侵害する法律を制定してはならない。(Wikipediaより抜粋)


と述べ、州法が違憲であることを説明したという。

今件のように、ゲームの表現における州法の規制が違憲であるとする判断はこれまでにもイリノイ州、カリフォルニア州、ミシガン州などで下されている。業界団体の中には「このような下らない州法のおかげで、税金が無駄使いされている」と憤りを感じている者もある。その一方でルイジアナ州の知事は今回の判決に対し「それでも今回対象となったようなゲームが、子どもに悪影響を与えると堅く信じています」「すべての親が子どものゲームをこまめにチェックするよう呼びかけます」「法律で規制できないのなら、流通ルートにおいて拒否することで子どもたちを守る必要があります」とコメントしたという。

アメリカで相次いで「問題表現のあるゲームの流通・販売を禁止する法律」が制定されたことは多くのメディア、特にゲーム業界関連冊子で報じられたが、なぜかその後のてん末についてはあまり語られていない。今回のルイジアナ州での判決をはじめ、多くの州法が実のところその合憲性を否定され、法そのものが無効化されているのが現在の流れといえる。

さて、アメリカの流れに後押しされる形で、急速にゲームの表現に対して規制の強化が叫ばれるようになった日本では、今後どのような動きを見せるのか。日本では修正第一条はないものの、似たような憲法の条文で「第21条:集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」というのがある。状況的に似通っているだけに、同じような動きがあるのか、注目したいところだ。

個人的には「ある程度の規制は必要」「だが今の流れは少々過度にすぎないか」という印象があるのだが……。

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