ハチドリのように生きたい……「ハチドリのひとしずく」がひそかな話題に

2006年08月26日 10:00

ハチドリイメージ先日NHKで『ハチドリのひとしずく』という絵本と、その絵本が引き起こしている社会現象のことが紹介されていた。これは小さなハチドリが主人公の、とても短い内容のストーリーからなる絵本なのだが、さまざまな方面で反響を呼んでいるという。

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『ハチドリのひとしずく』は正式には『ハチドリのひとしずく いま、私にできること』というタイトル。南米のアンデス地方の先住民族に伝わる物語を翻訳した、わずか17行のお話だ。まさに全文をここに引用できそうなくらいのボリュームなのだが、概要を説明すると

山火事が起こり逃げまどう動物たち。しかし唯一ハチドリだけが、自分の小さなくちばしで水のしずくを一滴ずつ運び、火の上に落とし、消火を試みる。それを見て何の意味があるのかとあざけりわらう動物たち。だがハチドリは「私は、私にできることをしているだけ」とだけ答えた。


というもの。物語そのものは去年初めて日本に紹介され、切り絵のようなビジュアルで創られた絵本は3万部売れた。、小泉今日子さんによる朗読CDも発売された。そしてこの物語が若い世代を中心に、共感を呼んでいるという。

「ハチドリのひとしずく」に登場する山火事は、さまざまな困難や問題を象徴していると読み取れる。ハチドリはたとえ小さな力でも、その状況を変えようとする一人一人の姿を表しているのではないだろうか、そう考える人は少なくない。

この物語を「環境問題へのメッセージ」としてとらえる人もいる。ある人は「何をすれば分からない」として迷っていたが、「ハチドリのひとしずく」を読み、「身の回りで、自分で出来ることをすればよい」と思うようになったとのこと。その人は「本が難しいことを言っているわけではない。けれど結構重要なことを言っているのではないかと思った。一人でもやること、やったほうがいいことはどんどんやったほうがいいと思った」と感想を述べている。

「ハチドリのひとしずく」を翻訳した明治学院大学教授の辻信一氏は

わたしに出来ることをするというこれだけのことが、子どもたちも若い人たちもなかなか考えつかない。社会からじわじわといつもプレッシャーを受けていて、そのプレッシャーは何と言っているかというと、「そんなことをやって何になるの」というあの動物たちのちょう笑だったり……。でも若者は、ものすごい可能性を秘めて力を持っていると思うんです。そういう力に光を当ててもらったという気がします。


と、物語への想いを語っている。

環境云々にとらわれることなく、単に「何となく生活して、生きているだけではなく、ハチドリのように、小さくても何かの役に立ちたい。無理をせず自分が続けていくのが重要」と考える人も多い。

ハチドリの話をどうとらえるかは人それぞれ。だが、多くの人が「自分のだめだけではなく、誰かのため、何かのためにとか、ああいう物語を読んで自分にもできるのではないかと思うようになった」とし、「ハチドリのように生きたい」「自分にとっての『ハチドリのひとしずく』を探したい」と思うようになった。

物語に触れた人がそれぞれの暮らしの中で、ハチドリのメッセージを活かし始めているのだという。

なおこの「ハチドリのひとしずく」だが、一昨年ノーベル平和賞を受賞した(「もったいない」運動で知られている)ケニアの副環境相ワンガリ・マータイ氏が英語版を出版すべく動き出しているという。数年後、英語圏でもハチドリのメッセージを受け取った人たちが多くの「しずく」を運ぼうとするようになるのだろう。


(最終更新:2013/09/16)

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