愛育病院とはそもそも昭和9年に昭和天皇より皇太子殿下(現在の天皇陛下)御誕生を祝しての御祝い金を元に、当時はほとんどかえりみられることの無かった「母子の保険と福祉の事業」のために設立された恩賜財団母子愛育会を祖とする病院で、皇族とは縁が深い。また、設立経緯と主旨にのっとり、産婦人科をはじめ母子の治療に関してはトップクラスの設備と人材、サポート体制を備えている。

医療設備やスタッフはもちろんだが、この愛育病院では特に入院中に患者に出される食事(病院食)が評判だという。テレビ越しに映し出された病院食は、確かに評判を裏付けるような美味しさを感じさせた。

入院経験のある当方(不破)も身に沁みて感じているのだが、入院生活では楽しみというものが極端に減る。外出もかなわないし身体に負担をかけることも原則禁止(そもそも出産にしても病気・けがにしても、入院した理由を考えればお分かりいただけると思う)。読書好きでも本ばかり読んで気を紛らわすのも限界があるし、来客との対応が相次ぐとかえって負担が増え、入院の意味が無くなる。変化のない閉鎖空間、閉鎖社会での日々の暮らしは、特にアクティブな性格を持つ人には辛いものがあるだろう。

そんな生活の中で数少ない楽しみとなるのが日々の食事。毎日三食、色々なレパートリーで驚かせ、見た目で楽しませ、そしてもちろん味わいで食感を満足させる。たとえそれが病院食であったとしても、日々同じパターンを繰り返す入院生活の中で、変化に富んだ刺激を与えてくれる。制限がキツいものでも、栄養士の工夫と知恵が盛り込まれることで、病院食は魔法をかけられたかのような輝きを患者に与えることになる。

特に愛育病院の病院食は質が高く、そのレシピが本になって発売され、評判を読んでいるという(右参照)。退院しても入院時の制限を続ける必要が多い以上、病院食のレシピがほしいと思う人は多いはず。当方もそれほどというわけではないが、入院時に何度と無く登場したもやしの和え物に病みつきになったし、添え物の制限食用食材が気になり、どうすれば手に入るのかを聞きだして、今でも注文しているくらいだ。そういったニーズに応えるものだけに、人気が出るのも当然だろう。

無事のご出産をお祈りするのはもちろん、今件をきっかけに、病院食や出産環境、慢性的に不足している産婦人科への興味関心が高まることにも期待したい。

(最終更新:2013/09/16)