個人向けローンが激減、その穴埋めを消費者金融への融資で行う銀行に金融庁参事官が苦言
2006年08月12日 19:00
【Mainichi INTERACTIVE】によると、全国の銀行146行の個人向けローン(住宅用を除く)の貸し出し残高が1991年のバブル崩壊後の15年間で約20兆円から8兆円あまりと半分以下に激減したことが明らかになった。一方で競合する消費者金融4462社の貸出残高はこの間に3倍以上に増えて11兆円を超え、銀行と立場が逆転している。さらに銀行などの金融機関から消費者金融への融資額は3兆円を超えると推定。低利の個人向け融資に消極的な銀行が、消費者金融への融資で収益を上げているといういびつな構造が浮かんだ。
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これは【日本銀行】の統計によるもので、銀行が無担保で貸し出す「消費財・サービス購入資金」の残高は1992年3月末の20兆3700億円から年々減少、2006年3月末には8兆6800億円になった。一方で担保を取る住宅ローンを含めた個人向け貸出残高全体は、66兆円から114兆円に増えている。銀行が無担保ローンには消極的な一方、貸し倒れリスクの小さい住宅ローンには力を入れていることを示している。
これに加え【金融庁】の資料によると消費者金融(無担保貸金業者)の貸出残高は1992年3月末は4兆1300億円でしかなかったが2002年には銀行の貸出残高を超え、2005年3月末には11兆6700億円に達している。また、銀行などの金融機関から消費者金融への融資額は2005年3月末時点で3兆6000億円(貸出金利は1.7~3.8%)。さらに銀行は消費者金融会社の社債を大量に引き受けており、消費者金融の資金はその大部分が銀行によって支えられていることが分かる。
銀行と消費者金融の資金の上での融資などのつながりの変化
こうした状況について金融庁信用制度参事官室の大森泰人参事官は「銀行は不良債権処理に追われ、消費者に貸し出すリスクを取らなくなって融資を手びかえた。その結果、個人は高金利の消費者金融への依存度を高めている。銀行はもっと個人向け融資に力を入れていい」と苦言を呈している。
不良債権処理という最優先事項を果たすためにリスクを減らさねばならず、そのために消費者への融資を手びかえるのは経営方針としては間違っていない。とはいえ、一方で自らよりも高利貸しの消費者金融に多額の融資をしてその役割を果たさせ、自分たちはリスクから逃れるというスタイルは、まるで「ダミー会社を作ってそこに危険なことをさせている」という図式を作っていると受け止められても仕方のない話。そもそもそれでは銀行が間接金融の要としての責任を果たしていないことになる。
不良債権処理の問題も何とかハードルを越え、さらにグレイゾーン関係で消費者金融のビジネスモデルの改変が行われるであろうこれからは、銀行も現在のスタイルを変える必要が生じてくることだろう。
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