世論操作と工作員の話-2

2006年08月12日 19:00

(【世論操作と工作員の話-1】からの続き)先のJ-CASTの記事では法的にどうなのかと弁護士に問い合わせたところ「工作員の書き込みが擁護であり権利侵害や誹謗中傷でない以上、法的に問われることは難しい」という意見が帰って来たという。いわば企業の情報防衛で当然の責務とのこと。ただし、報道機関の場合は、中立性を第一義的とする立場として、放送倫理や民放連の規約に抵触する可能性があるとしている。

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またJ-CASTの記事にはなかったが、当方としては証券取引法との絡みも考えられる。つまり企業が風評を操作することは株価の操作につながり、問題があるのではないかという考え。証券取引法には次のようにある。

<風説の流布、偽計、暴行、脅迫等の禁止>
第百五十八条 何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくは有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、外国市場証券先物取引等若しくは有価証券店頭デリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない


つまり、風評の操作は結果として株価の変動で儲ける・儲けないは関係無い。「変動を図る目的」~例えば事実が流れて話が広まれば株価が下落するだろうから、そのコミュニティでの話の流れを変えたり事実でないことを触れ回ったりして、株価下落を抑える、つまり起きうるべき株価の下落を別の方向に変動させるよう図る目的~であれば、この第158条に抵触しうるということになる。

ここで問題となるのは「風説」という言葉の定義。これは「噂」であり、虚偽であるかどうかは問題にならない。「虚偽の風説」なら「ウソの情報」だが、単なる「風説」なら「噂」にしかすぎず、それが事実かどうかは別の話。

今後、この「工作員」絡みの「世論誘導」は、行われていることは確かではあるが、法的に問題はないのか、上記にあるような民放連規約や証券取引法と照らし合わせ、議論がなされるべきだろう。

閑話休題。そもそもこういうサービスは、表立って喧伝し実施すること自体間違っているような気がするのは当方だけだろうか(先の記事でも疑問を呈したが)。例えるのなら江戸時代に忍者や隠密が堂々と行動内容についてアピールしたり、近代なら国家秘密諜報部員がテレビCMに登場して求人を行うようなものだ。

小話で「007は本当に優秀なスパイではない。真の優秀なスパイはその存在そのものが知られていないのだ」というのがある。このような活動は本来、存在そのものを明らかにしてはいけないと思われるのだが、どうだろうか。やらせやサクラによる宣伝も、気持ちよくだましてくれれば(そして実害がなければ)何の問題もない、やり方がへたくそだから興ざめし、よくないイメージを持ってしまうということは何度も述べた。

今件の「サクラ」「工作員」もやり方がお世辞にもうまくないため、このように行為・存在が疑われているのに他ならない。このように「下手な工作」が増えたのも、そのような行為をするところが、「インターネットが普及している現状」「情報そのものが何であるのか」を十分に理解していないために起きていること、あるいは「現状に対応し切れていない、振り回されている」がために起きているのではないかと推測されるのだが。

企業の(情報)リスクマネジメントをするなら、もっと別の、スマートで正しい、本来あるべき方法があるのではないですか?」ということで締めくくることにしよう。

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