タンス株10兆円を巡り証券会社各社の争奪戦続く
2006年08月29日 07:30
【NIKKEI NeT】などでも報じられているように、上場企業の株式が2009年1月から電子化されすべてネットワーク上のデータで管理されるのに伴い、証券会社各社では個人投資家の手元にある「タンス株」の争奪にしのぎを削り始めている。「タンス株」は電子化される前に名義書換をしておかないと、たとえ手元に株券があっても株主の権利を行使できなくなる恐れがあるため、証券会社らによる顧客獲得競争ということだけでなく、【証券保管振替機構(ほふり)】でも注意を呼びかけている。
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上場企業の株式の取引は手間を省くために2009年には現物の株券そのものを無くしてデータ化される。そのため、株券に書かれている名義人が株主として登録されるが、個人投資家が手元に置いたままの「タンス株」では、相続などによって譲り受けたまま、名義を書き換えていない恐れがある。この場合、権利を主張する株券そのものが無効になるため、株主としての権利が行使できなくなる可能性が高い。
「ほふり」側の調査によると、上場企業が発行した株券は3643億株、時価総額は560兆円ほど。30兆円から35兆円分ほどは手続がまだ終了しておらず、そのうち「タンス株」は10兆円から15兆円ほど、4.9%にあたる183億株に相当と推測されている。
ほふり側では名義の書き換えて続きを進め、新制度への移行に備えてほしいと呼びかけている。そして証券会社ではこの「タンス株」の入庫でそのまま自社の顧客になってもらうことで、新規顧客を大量に囲いいれることができるので、またとない商機と見ている。
特に「タンス株」の保有者ともなれば、ごく普通の個人投資家ならばあまり見かけられない「上場企業の株式を直接株券で所有している」わけで、どちらかといえば「大手優良・大口の個人投資家」の可能性が高い。ともなれば証券会社にしてみれば「上得意さま」になるのは当然のこと。
「タンス株が単なる紙切れになる悲劇を避ける」というお客の便益にもかなうと共に、証券会社にもプラスとなる、ウィン・ウィンの構図にもある今回の「証券会社各社によるタンス株争奪戦」。結果次第では証券会社の勢力図も、多少は書き換わるかもしれない。
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