「牛丼1杯5000円でも大丈夫」!?社会保険庁が若者向けに年金の安全をアピール
2006年07月11日 07:00
社会保険や国民年金絡みで何かと話題に登る【社会保険庁】だが、同庁が開設している、年金問題を取扱う専用ページでの表現がちょっとした話題を呼んでいる。そのページの題名は「若者のみなさん! あなたの将来、ダイジョーブ?」というもの。
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「若者のみなさん! あなたの将来、ダイジョーブ?」では「ねんきんダイヤル」をアピールすると共に、未払いが多い年齢層である若年層に向けて、「あなたの将来は大丈夫なの」と問いかけ、年金に関する各種説明を行い不安感を払拭し、年金支払いを啓蒙している。
具体的にいわく、
・もし、150歳になっても、ダイジョーブ。
・牛丼が5,000円になっても、ダイジョーブ。
・万一のときでも、ダイジョーブ。
の3つの例を挙げて説明しているというもの。年金に入っておくことで障害基礎年金や遺族基礎年金など、「もしもの時のための保険」のような年金の享受を受けることができる仕組みを説明している「万一のときでも、ダイジョーブ。」の部分は、有意義な制度の再確認だし、案外知らない人もいる内容だから十分に納得の行くものである(それに今後、年金不払いの状態では公的保険も満足に受けられなくなる可能性もある)。
問題視されているのは上の二つ。「もし、150歳になっても、ダイジョーブ。」では「おトク」「おトク」を繰り返し、国の補助があるから損はしないなどを訴えかけている。「牛丼が5,000円になっても、ダイジョーブ。」では年金は物価にスライドするから問題はないと説明している。
多くの人に分かりやすいように、単純でインパクトのある例を挙げて内情を説明しようとする意図は判らなくもない。だが「150歳まで生きても年金はもらえるよ」「牛丼5000円になってもそれなりに給付額はスライドするよ」と、現実味の薄い過度のたとえ話をすることで、かえって信ぴょう性が薄れていることも否めない。
年金不払いの大きな原因である「支払い金額が今のルールでならともかく今後ルールが次々に変えられて、受け取る段階になったら結局損をするような仕組みになっているのではないか」「社会保険庁をはじめとする運営側の無駄使いばかり目立って、折角支払っても有効に使われていない」「現在の支払い水準ですら決定的に不足していることが指摘されているのに、今後さらに減るのだから払っても意義は薄い」という疑問にはほとんど答えていない(答えられない)のも問題。
「牛丼1杯5000円」「150歳になっても」など扇動的な言葉であおっても、根本的な問題を解決しない限り、年金の財源不足は解消しない。一般家計や民間企業の財布の中身が苦しくなった時の対処法と同じように、まずは「無駄使い」を抑えるべきだろう。一部の特定関連業者や権限を行使する立場にある人たちにとっては有益かもしれないが、財務的にはまったく無駄に他ならないものも山ほどある。また、年金を徴収すべき人なのになんやかんやと難癖をつけたりわけの分からない特例を持ち出して保険料を支払わず多額の年金だけを受け取る「義務を果たさず権利を主張する」者たちが多く存在するのも事実。
まずはそういった部分の支出を抑えるのが先。牛丼1杯5000円の心配をするのは、その後でも良いはずだ。
むしろ社会保険庁には、このような問題を半ば放置したことで、年金制度そのものを危うくしたということだけでなく、その怠慢さゆえに「将来に向けて貯蓄したり年金を支払うことなど莫迦莫迦しい。今のうちに使って楽しまなければ」という、享楽的・キリギリス的な考えを特に若年層に植え付けてしまったことについて猛省してもらわなければならないだろう。
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