原油高で注目される「バイオタノール」とは
2006年07月09日 12:30
主に供給量の不足というよりは需要の急速な拡大(特に中国)と、それを見越した投機的買い入れによって高値が続く原油高によって、【新エネルギーとして期待が高まるバイオエタノールの大規模実証実験、沖縄で始まる】でも紹介したように原油の代替エネルギーとなりうる「太陽電池」や「バイオエタノール」に注目が集まっている。今回はこのうち「バイオエタノール」について簡単にまとめてみる。
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将来供給量が少なくなるのが確定している原油・石油に代わるエネルギーの開発と普及は前々から叫ばれていたが、費用対効果の面で研究が進まない状況が続いていた。つまり「いつかは無くなるだろうけど、今はまだある。それなのに何で石油より高い代替エネルギーを使わなければならないの」というわけだ。
そして20世紀の終わりごろから繰り返し言われていた「原油の値段が上がって『代替エネルギーの方が割安』にならないと研究は進まない」という状態になってしまった今、急速に各種代替エネルギー開発が推し進められつつある。その中でも注目を集めているのが「バイオエタノール」だ。
この「バイオエタノール」とは、サトウキビやトウモロコシなど植物や廃材を使って作られるエタノール(エチル・アルコール)のことで、環境にもやさしい新型燃料、と言われている。ブラジルではこのエタノールで走る車が全体の15%にものぼる。ガソリンに混ぜて車の燃料としても使え、混ぜる割合が3%以下なら現行の車でもつかえることから、石油の代替エネルギーとして注目を集めている。
また、石油産出国であると同時に大量消費国でもあるアメリカでも、脱石油を推し進めるために、積極的に導入する方針を打ち出している。具体的には2030年までに2004年当時の輸送用燃料消費の30%をバイオ燃料に置き換えるという目標を発表、その目標達成のために大規模な予算計上などさまざまな手を打ち始めている。この動きに乗じて2006年5月にはゴールドマンサックス証券がカナダの開発会社【IOGEN】に対して3000万ドルの投資を行うなど(【発表リリース】)、大規模な先行投資が積極的に行われている。
石油資源に乏しい日本でも積極的な開発が進められている。「バイオエタノール」先進国であるブラジルと手を組み、事業化を進めている【三井物産(8031)】がこの分野では一歩先を進んでいる形。【物産ナノテク研究所】ではエタノールを用いた自動車の運転試験を続けるなど、技術力と経験に秀でている。
【三井造船(7003)】ではNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共に「木質系原料によるバイオエタノール製造」の実証実験事業を実行中である(【プレスリリース】) 。これは廃材となった木材資源を主原料にしてエタノールを造る技術を実証するというもの。
また、先の記事でも紹介した【アサヒビール(2502)】や【日揮(1963)】などがバイオエタノールの各種プロジェクトに参入している。
石油は現在の科学文明を維持するには欠かせない資源だが、採掘場所が限定されているため、石油ばかりに頼りきっている状態は、場合によっては命取りになりかねない。投資でいうところの「リスク分散」という意味でも、原油を元にした石油以外の燃料の供給もとを確保する必要がある。
日本に限れば石炭は比較的豊富にあるが、エネルギー変換率が低いのが難点。また、石炭の液状化(人造石油の精製)も技術としてはすでに戦中から確立しており、北海道では1942年から少量ではあるものの現地で採れた石炭を元にした人造石油が精製されていた。しかしこちらも手間がかかるのと石炭の採掘の経費高騰で採算がとれず、効率化、コストダウンの研究は進んでいない。
一方今回採りあげたバイオエタノールの場合、原材料はサトウキビやとうもろこし、廃材など、日本でも多く産出することが可能で、地政学的リスクは最小限に抑えることができる。コストダウン化はこれからの研究課題であるが、不可能ではないはずだ。もちろんこれらの原材料を作るために必要となる燃料の消費を考えた上で「本当に割安なのか、地球に優しいのか、安全なのか」を考える必要があるのは言うまでもない※。
知恵の結集と先見の明を持つ人たちによる勇気ある投資によって、これらの研究が実を結び、日本がブラジルにつぐバイオエタノール立国となればどんな未来が待ち受けているか。想像するだけでも愉快でならない。
※「原材料を作るために必要となる~」:
例えば1ガロンの原油の代わりとなるバイオエタノールを造るのに必要なサトウキビが1トンだったとして、そのサトウキビ1トンを育てるのに2ガロン分の原油を消費するだけの耕作機械の稼動が必要だとしたら、少なくとも「石油・原油の節約」には役立たないということ。一次的原材料の観点だけでなく、その原材料を手に入れるために必要な労力・資源まで考慮する必要がある。
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