【更新】「萌え」に限らず「アニメで稼げ」、商社が多方面でアニメビジネスを展開

2006年07月01日 19:30

[YOMIURI ONLINE]のコラム記事において、総合商社各社がアニメや映像など俗に言う「映像コンテンツ」の輸出戦略を強化すると共に、国内外においてアニメ関連の金融商品を展開する方向性を持ちつつあることが紹介されていた。

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[三菱商事(8058)]では[電通(4324)]と20億円を折半して日本製アニメに投資する映像ファンドを設立。さらに電通のアメリカにおける映像ソフト子会社へも34%の出資を行ったという。さらに三菱商事ではファンド経由で年15本から20本のアニメ製作に投資し、放映権料などに応じた配当収入を狙う。そしてその作品をアメリカのテレビ局などに売り込んで、さらなる放映権料を獲得する計画すらあるという。放映権料ビジネスでは三菱商事だけでなく、【伊藤忠商事(8001)】【双日(2768)】【三井物産(8031)】もファンドや出資、業務提携などでアニメを商材としての利益獲得を目指している。

またターゲットとした作品がヒットすれば、ファンドの配当だけでなく、商社の既存ルートを用いた放映権の輸出、関連商品の販売など、さまざまな相乗効果的収益機会を得られるのが商社の立場としてのメリット。先の三菱商事の場合だと、ベーゴマバトルの近代版ともいえる「ベイブレード」絡みでアメリカやアジア各国に放映権を売却し、関連アイテムの販促にも成功した。

海外という広い市場にアニメという商材の「活躍場」を模索する各商社の方針とは異なり、日本国内の基盤強化を推し進めているのが【住友商事(8053)】だという。住友商事では元々複合型映画館の運営会社やケーブルテレビのジュピターテレコムなど、日本国内でさまざまな映像メディアを配下に収めている。最近では、これまでの角川書店と折半だった、かつてゲーム製作も積極的に行っていた映画配給製作会社のアスミック・エース エンタテインメントへの出資比率を75%に引き上げるなど、日本国内でアニメをはじめとする映像コンテンツの収益確保を模索している。

記事では住友商事の国内重視戦略は、「映画製作から劇場公開、DVD販売、有料放送にいたる『川上から川下まで』を参加におさめ、国内市場で作品への投資資金を回収できる体制を整える戦略」であるとまとめている。

この「川上から川下まで」という考え方は、何もアニメ・メディアコンテンツに限ったことではなく、すべてのビジネスにおいて基本かつ重要な「もっとも儲けやすい」考え方に他ならない。事業の一部を他社に任せたり第三者のアシストが必要な構造になると、どうしてもそのポイントで無理が生じたり価格調整が難航したり、最悪の場合そのポイントで「流れをせき止められてしまう」可能性がある。その一方、「川上から川下まで」すべてを掌握していれば、少なくともその川の流れについては自由自在に流れの方向を変えたり、水量を調整することができるようになる。意思決定も自らのものだけで行動に移すことができ、状況の変化にも迅速な対応が可能となる。

三菱商事などは商事会社の老舗中の老舗であり、さらに電通のような広告展開のプロがついているのだから、特に問題はないと思われるが、それでも第三者の思惑でイレギュラー的なトラブルが発生する可能性はある。そのようなリスクを考えると、住友商事が「他は海外に注力しているからうちは日本国内で」と決め込んだのかそれとも「国内で体制を整えたのちに海外に進出し、効率よく利益をあげよう」と考えているのかは不明だが、中長期的な戦略でコンテンツビジネスに注力しているようすがうかがえるといえよう。

【角川書店が20億円規模のアニメファンドを設立】【4割プラスから6割マイナスまで、アイドルファンドの「いろいろ」】のように、日本国内でもアニメやアイドルなどメディアコンテンツへ投資を行うような金融商品が増えてきている。一方で【個人向け映画ファンド「忍」失速、元本割れも】にもあるように、映像コンテンツのファンドは失敗時のリスクが高めなのも事実。

今後アニメビジネスに関連した金融商品、特にファンドは増えてくることは間違いない。そのコンテンツへの思い入れがあり、応援の意味でファンドを購入する人も少なからずいるだろう。しかしファンドも「応援投票」の意味合いが多少はあるにしても金融商品にほかならない。選択をする場合、満足いくだけの配当や最終的な運用成績をまず第一義的に頭に入れるべきだ。

その点さえ注意できれば、投資対象、選択肢として自分の興味のあるコンテンツに間接的ながらも投資できるファンドの登場は、極めて喜ばしい話だと思って間違いない。

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