ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(4)

2006年07月23日 18:00

先に【ガンホー(3765)、元職員による同社『ラグナロクオンライン』への不正アクセスを発表】で報じた、ガンホーの元職員による大量のゲーム通貨偽造事件。情報の再整理と検証のその4。ようやく事実確認のまとめ記事としては最後。今後似たような問題が発生する可能性が高いことを考えれば、これくらい注力して記事を書いてもバチは当たるまい。

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7.「錬金術」の可能性

基本的に国家経済の根幹をなす通貨は、戦略物資ともなるし、その体制をしっかりとコントロールしておかないと経済、しいては国そのものがダメになる原因となりうる。第二次大戦中でもドイツがイギリスに対し、日本が中国に対して偽造紙幣を大量に作って経済を混乱させる作戦を実施したのは有名な話(ちなみに両方とも失敗。元々の流通量が大きすぎて効果がなかった)。

今件はあくまでも一つのゲームの中における通貨に過ぎず、しかも直接兌換性のあるものでは無い。しかし現実問題として数千万円という多額の現金を打ち出の小づちから引き出せることを実証してしまった。

これは(あくまでも「仮に」の話だが)システム側と換金企業、あるいはそれに類した仕組みを持つものが結託すれば、無尽蔵な「現金」を産み出す、自由にコントロールできる造幣局を手に入れることも不可能ではなくなるということを示している。「プリントご○こ」で次々に1万円札を刷り、ドルに換えて海外へ持ち出すようなものだ。

もちろんこれには前提として「現金と交換される価値があると市場が判断するくらい、そのゲームが流行っている」必要がある。つまり市場そのものが形成されていなければならない。プレイヤーが全国で数百人しかいないゲームでゲーム内通貨を量産して現金化しようとしても、買い手がほとんどおらず、もくろみも失敗に終わるだろう。先の例なら「人口数十人の過疎の村で、村内の商店街の金券を億単位で刷る」ようなもの。

だが逆に、ある程度のスケールメリットを得ている、経済・通貨システムを導入しているネットゲームなら、すべてがその可能性をもっているともいえよう。

「ゲームは単なるゲームなのだから」では済まされない。現金を出してほしがる人がいて、売って現金を手に入れたい人がいる以上、市場が形成されうる。お金となりうるもの、つまり(デジタルデータであって現物が存在していなくても)準兌換性のある、あるいは準有価証券的な意味を持つ「通貨」を取扱っているのだと、各運営会社は自覚し、いましめなければならない。

また、法的規制も必要になるだろう(が、今件については割愛。法務関連の資格もなく業界にいたわけでもないので言及するのははばかられる)。

8.海外での動向

ネットゲームでは先進国にあたる諸外国の動向は、【巨大化するRMT市場――仮想通貨「偽造」事件が突きつけるオンラインゲーム周辺市場の複雑さ(NIKKEI NeT)】などが詳しい。これによると、韓国やアメリカ・ヨーロッパでは法規制が行われる方向で情勢が動いているという。

日本も今後、似たような姿勢で臨む必要があり、その際には先進国たる海外の動きを参考にする必要があるだろう。

問題なのはネットワークゲームがインターネットを通じて、世界中につながっていること。IPブロックで特定国からのアクセスを禁じているゲームもあるが、一般的には世界のどの国からもネットワークゲームにアクセスは可能。アメリカや韓国で法規制が厳しくなっても日本で甘ければ、「不法行為で荒稼ぎをする集団」は日本にターゲットをしぼり、市場・ゲームそのものを荒し、不当な利益を得る場として利用することだろう。

その意味では、早急な法的整備が必要とされる。


■関連記事:
【ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(1)】
【その(2)】
【その(3)】
【その(4)】
【その(5)】


(最終更新:2013/08/27)

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