ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(3)
2006年07月23日 18:00
先に【ガンホー(3765)、元職員による同社『ラグナロクオンライン』への不正アクセスを発表】で報じた、ガンホーの元職員による大量のゲーム通貨偽造事件。情報の再整理と検証のその3。これだけネットワークゲームに関するお話を書き連ねたのも久々のことで、懐かしみを覚えながらタイプしている自分がいる……と感傷にひたっても仕方が無いか(笑)。
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5.法体制の問題-直接的に
当方(不破)は法関係の有資格者ではないとあらかじめお断りした上で。今件では該当者がとわれるのは「不正アクセス禁止法」違反のみ。最高でも一年以下の懲役か50万円以下の罰金に過ぎない。50万円以下の罰金で数千万の儲けを得たのでは(もちろん今後の人生を考えると金銭の損得だけでは済まないが)「やり得では」という意見があるのは否めない。
ガンホーが今件について、ガンホーそのものの名誉を傷つけたと判断すれば「名誉毀損」、ゲーム内通貨ゼニーの乱発でゲームの経済が乱れ、ゲームそのものの価値が下がったと判断すれば「偽計業務妨害」を提起することも不可能ではない。だが判例がほとんどない上、裁判ともなればさまざまな証拠をガンホー側も出さねばならないので、都合があまりよろしくないかもしれない。
今件では「直接ガンホーから現金を詐取」したわけでないことがネックとなっている。該当者は別にガンホーの金庫から現生をつかみ取りしたわけでも、銀行口座を操作して運営資金を自分の口座に移したわけでもない。運営されているゲームの電子情報を改ざんしたに過ぎない。そしてその電子情報たるゲーム内通貨は、兌換性を公式に認められているわけではないので、「実物」があるわけでもなく「有価証券」として法的に認識されているわけでもない。金銭的な「被害」を法的に算出しにくいということになる。
これが仮に小切手や手形、株式などの有価証券なら各種法律によって網をかけることもできる。だが今件ではそれがかなわない。
例えるのなら、「特定地域にのみ通用する地域振興券」「商店街の金券」を勝手に増刷してあちこちで買い物をし、それらの商品を換金してふところに納めるようなものだ。しかもこの場合は本来の発行元である管理自治体や商店街が(券を引き換える必要があるので)損失を被るためお縄にかかる。
ところが今件ではさらにややこしいことに、管理自治体や商店街に該当するガンホーが、直接現金とゲーム内通貨を交換しているわけではないので、損失を発生させていないのである。「券」が現実のものでないこともややこしさに拍車をかけている。
法の抜け穴的問題として、今後論議が交わされるに違いない。
6.法体制の問題-間接的に
先に「2.「被害額」の再検証」で「記録を事実上残さずに現金を手に入れることができる」としたが、これがどんな危険性をはらんでいるか気がついた人も多いだろう。現金の入手、つまり「収入」が税務当局に把握されないということは、やもすれば税金を逃れられることに他ならない。俗に言う「アングラマネー」の増長を手助けする可能性もある。
今件でも該当者は事態が発覚さえしなければ、そもそも「収入」を申告するつもりなどさらさらなかっただろう。RMT業者が支払いについて細部を税務当局に申告していれば、そこから「足がつく」可能性はあるが、売却対象が個人で、しかも不特定多数ともなればそれすら難しくなる。
似たような話ではすでに同人誌やネットオークションでの売買における売上・収益について問題になっている。この分野でもすでに税務当局が行動を開始しており、税務調査を行い大規模な追徴課税が行われたという話もよく聞く。だが税務局員の数も有限だし、比例原則(かけた手間とその結果得られた成果を比較して、手間ばかりかかる場合には行動に移さないという官公庁の行動原則)もあるため、すべての把握は難しい。
■関連記事:
【ガンホーの『ラグナロクオンライン』での通貨不正作成で思うこと(1)】
【その(2)】
【その(3)】
【その(4)】
【その(5)】
(最終更新:2013/08/27)
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