イギリス大手チョコメーカーがソフトの不具合でチョコを過剰生産、会社経営も傾く
2006年06月11日 06:00
【Japan Internet Com】によるとイギリスの大手菓子(特にチョコレート)メーカーの【Cadbury Trebor Bassett】では2005年に主力製品のチョコレートを過剰に生産してしまい、業績に影響が出てしまったが、その過剰生産は新しく導入した【SAP】のERPシステムの不具合のせいなのだという。
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ERPとはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、経営資源を有効に活用する点から企業全体を管理して、経営の効率化を図るためのシステム。要は「会社の事業のために存在する在庫や人材、顧客管理までを効率的に使いこなしていくための管理システム」。
Cadbury Trebor Bassett社ではこのERPの不具合で大量在庫をかかえ、さらに年始がチョコレートなどのお菓子はあまり売れない(年末にゴージャスな食事をした反動で皆がダイエットをするため)市場動向を受け、主力商品の大幅値下げを余儀なくされた。結果として同社の第1四半期の業績は3200万ポンドの影響を受け、そのうち4割近い1200万ポンドはERPシステムによるものとしている。
元記事によれば親会社の最高責任者は「ヨーロッパのお菓子・飲料事業部が厳しい状況にあるのはIT問題(ERPシステム)も関係がある。在庫問題は新ITシステムの実装に関連している」と説明しているという。
システム上の不具合に人間が気がつかず大きな損失を被ったという話では、今年の5月に【ユニクロ(9983)】がネット通販サイト上の仕組み(「買い物かごに入れる」だけで実際の商品が即時補充される)のウィークポイントに気がつかずに、特定の顧客から偽の「注文」を受けてしまい、4000着ものタンクトップの在庫を発生させてしまった件が記憶に新しい。ちなみにこの件では「電子計算機損壊等業務妨害」で逮捕者が出ている。
Cadbury Trebor Bassett社にしてもユニクロにしても、その道の専門家なり経験豊富なものがその場にいれば、生産数の「異常さ」に気がつき、システムを再点検するなり、一時生産を止めて様子を見るなどをしたはずだ。IT化されたシステムは正常に動いている限りでは非常に便利だが、設定に問題があったり状況の変化に対応できないと、今件のようにエラい結果を導きだすことになる。よほど巧みな設定をしない限り、ERPシステムだけでなくIT関連のシステムは、フォン・ゼークト※いわくの「無能な働き者」にしか過ぎない。つまり、間違った命令でも黙々とこなし、気がついたらとてつもない損失を生み出してしまう。
便利なものに頼りすぎると時として痛いしっぺ返しを食らうこともある、という良い事例なのだろう。
それにしてもCadbury Trebor Bassett社のチョコは一般の雑貨店や100円ショップでもよく見かけるが、よもやこんなことになっていたとは。あらゆる意味で驚きでもある。
※フォン・ゼークト:第一次大戦後のドイツの将官。軍の組織論として
有能な怠け者は司令官に
有能な働き者は参謀に
無能な怠け者は下級将官に
無能な働き者は退官してもらう
という論調を提示した。この考え方は軍だけでなく一般の組織論としても広く伝えられている。ちなみ今回のERPシステムで取り上げた「無能な働き者」がなぜ好かれないかといえば、「働き者なのはありがたいが、無能であるために間違いに気がつかずに命令をただひたすら実行し、そのミスを拡大してしまうから」である。
(最終更新:2013/09/18)
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