記者会見からかいま見られた村上ファンドへの色々な想い
2006年06月05日 23:00
ニッポン放送株式取得に絡んだインサイダー取引で本日6月5日、「村上ファンド」(『村上ファンド(www.maconsulting.co.jp)』などによる投資ファンド)の代表村上世彰氏が逮捕され、それに先立ち東証で同氏による記者会見が行われた。その記者会見を当方(不破)も勤め先の好意でリアルタイムで見ることができたのだが、その中で気がついたこと、思ったことをいくつか。
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●村上ファンドの実態
まず不明な点が多かった村上ファンドの実態が少しではあるが明らかにされた。村上ファンドを構成する7ファンドの資金は総計で約4000億円。6割がアメリカの大学財団の資金で、約100の企業・団体の資金を運用している。機関投資家などは10億円から1000億円を投資しているとされ、「大手証券出身者を中心に、十数人」が実動部隊として運用に携わっている。
なお、今回【阪急ホールディングス(9042)】による【阪神電鉄(9043)】の株式公開買付に応じることで4000億円のファンド資産のうち2/3がキャッシュポジション(現金)になるとも述べた。今日の記者会見後、俗に言う「村上銘柄」が反発したのは、「すでに村上ファンド保有の株式はほとんど現金化されている。これ以上売りこまれる可能性は低い。ならば今現在思惑で売られて値を下げているのは買い時だ」という判断が投資家らによってされたことによるところが大きい。
また、村上氏は今回の逮捕劇について日本の市場に対して絶望失望したと述べ、投資業界からの引退を表明。さらに「村上ファンド」の出資者には契約上の12月まで出資金が引き出せないが、状況をかんがみて資金の返還要請があればそれに応じる姿勢を見せた。
●村上氏の投資スタンスとTOBについて「知っていた」「知らなかった」
さらに村上氏自身の投資スタンスについて「投資した企業への情報開示や株主価値の向上を目指すべく既存経営陣と対決し、あるいは努力してきた」とする一方、「証券取引法の改正などで自分の資金運用の手法として用いている投資事業組合への情報開示の強化が行われるのは勘弁ならない」と述べるなど、記者会見では勇ましく聞こえたものの、あとになってテキスト化してあらためて読んでみると「?」マークを投げかけざるを得ない内容も数多く見受けられる。
ニッポン放送株式取得のインサイダー取引云々についても記者会見上では「結果としてインサイダー取引になってしまった。意図的にそうしたわけではない」ことを語ってはいるが、ライブドアに対して「村上ファンドで17%持っている。ライブドアで3分の1を取得すれば(17%+33.3%=50.3%となり過半数になるので)同放送を手に入れられる。そしてそれはフジテレビの支配にもつながる」と村上氏自身が述べているのも見逃してはならない。
つまり事実上の株式公開買付(TOB)に相当し、「その情報を事前に知った上で株式を購入することを禁じている」5%という枠を大幅に超えていることを認識しているのは明らかなのだ。5%を超えたらTOBになるというのを知らなかったとすれば(投資のプロ中のプロを自称し経験も長く、さらに通産省OBであればこそ)それはミス以外の何物でもない。一方、知っていた上でライブドア側に勧めて買い増しもしたのなら、故意犯になる。
●お金儲けは悪いこと?
また、村上氏は記者会見の中で繰り返し「お金儲けをしたから、たくさん儲けたから糾弾された」と語っていた。熱心な口調からついつい聞き入ってしまい、本当にそうかもな、と思ったのは事実。だがその一方、弁論的手法の一つである「論点のすり替え」として受け止められたのも否定できない。
もちろん「お金をたくさん儲けること」は決して悪ではない。むしろ褒め称えられ絶賛され崇め奉られるべきだ。問題なのは「お金をたくさん儲けること」ではなく「儲ける過程で既定のルールを守らないこと」にある。
つまり、本来は今件については
「お金を儲ける過程でルール違反をしたこと」に対してペナルティが与えられようとしている
のに、村上氏は記者会見で
「お金を儲けることそのもの」に対してペナルティが与えられようとしている。
と訴え、「そんなことでいいのですか?」として、第三者からの同意を集めようとしている、ようにも見受けられるのだ。「ルール違反をしたこと」という重要なポイントがこっそりと抜けている。実際多くの人が、テキスト化された今回の記者会見ではなく、断片的に編集された記者会見の動画・映像を見れば、村上氏側の(論点をすり替えた)主張にうなづき、同情してしまうことだろう。
以上の話のうち村上氏の発言によるところは、あくまでも「村上氏側の主張、発言」であり、それがすべて真実であるかどうかは確かではないことをここでお断りしておく。また、例えそれが結果として真実について語っていたとしても、語り手によって受け取れる印象や内容が変わる可能性もあることを忘れてはならない。
●Not 村上 , but さわかみ
村上ファンドが拠点をシンガポールに移す前後に、投資ファンドの投資スタンスについて自分の投資の師匠と話す機会があった。その中で、「国内外の投資ファンドのスタンスをそれぞれ当てはめると、村上ファンドはジョージ・ソロス、澤上篤人氏らによるさわかみ投信はウォーレン・バフェットというところかな」と例えた。そして(実際自分がそれほどの多額の資金を運用できることなど夢のまた夢なのだが)どうせなら村上ファンドのような手法ではなく、さわかみ投信のようなやり方、つまりキャッチコピーにするなら
Not 村上 , but さわかみ
(村上ファンドのような手法でなく、さわかみ投信のようであれ)
だよね、と話したのを記憶している。語呂がよく、韻も踏んでいるので実はこの言い回し、結構自分でも気に入っている。今回の逮捕劇で、この言葉の重みが(少なくとも自分にとっては)ますます強まったような気がする。
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