村上ファンド、阪神電鉄(9043)に対し身内など過半数9人の取締役就任を要求

2006年05月02日 19:50

【阪神電気鉄道(9043)】は5月2日、先に『村上ファンド(www.maconsulting.co.jp)』側から提示されていた株主提案書類を開封、その中身と阪神側の見解を明らかにした(【発表リリース、PDF】)。それによると、株主提案は現外部取締役1人と村上世彰氏本人を含む村上ファンド関係者8人の計9人(取締役の過半数)を取締役候補者とする議案であったという。

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リリースによれば取締役候補推薦者は次の通り。

玉井英二(現 当社取締役、三井住友カード株式会社特別顧問)
村上世彰(現 株式会社M&A コンサルティング代表取締役)
丸木 強(現 株式会社M&A コンサルティング取締役)
加藤 楠(現 株式会社M&A コンサルティング社員)
大月綾子(現 株式会社M&A コンサルティング社員)
石井賢史(現 株式会社M&A コンサルティング取締役)
鈴木俊英(現 株式会社M&A コンサルティング社員)
新行内敦子(現 株式会社M&A コンサルティング社員)
秋葉栄二(現 株式会社M&A コンサルティング社員)


村上ファンド側の主張としては「阪神が株主価値を上げるためには社外取締役を選任する必要がある。玉井現取締役は実績があるし、他の8人は自分も含め自分のところの役職員で優秀だから選任することが適切だ」というもの。

なお『村上ファンド側の発表』によれば推薦する取締役については、「追加として新規9名」ではなく「定数の16名のうち9名を」ということであり、取締役会における実質支配権(商法上取締役会は参加する取締役の頭数で議事が決議される)を握ると主張しているのと同等である。さらに「取締役定数を現在の16名から8名に減らすのなら、村上ファンド側は玉井英二氏と村上氏本人、その他3人、計5名を推薦する」としている。

さらに発表の中で、

現在、阪神電鉄をめぐっては、阪神電鉄現経営陣が検討されている阪急ホールディングスとの関係強化案のほかにも、企業価値・株主価値向上に向けた提案を弊社宛に複数提示いただいている状況です。阪神電鉄に対して様々な選択肢をご提示くださった関係者には、阪神電鉄株主として深く感謝しております。阪神電鉄現経営陣におかれては、特定の相手との提携案に拘泥することなく、十分時間をかけてすべての選択肢を比較検討の上、企業価値・株主価値を最大化する施策に決定していただきたいと考えます


とし、「阪急以外にも阪神の買い手はいくらでもいる(のだから早く要求呑まないとそちらからの攻勢もくるぞ)」とし、阪急との交渉に注力している阪神側、そして阪急側に大きなゆさぶりをかける内容を提示している。

阪神側はこの提案に対し「純投資として株式保有を報告しているのに、これでは経営支配を直接目的とするものではないか」とし反発を強めると共に、他の株主や関連グループと係わり合いの深い沿線住民らにその是非を問いかけている。また、現在【阪急ホールディングス(9042)】との間で進められている協議についても、「経営統合の実現にむけて真摯かつ友好的な協議を進めて」いるとし、状況は進展しつつある、とコメントしている。実情として、阪神や阪急側からしてみれば「無茶な提案して……高値で買い取らせるためのブラフに過ぎないのだろう」と頭を抱えていることだろう。

間接的にはともかく、商法上などにおいては地域住民云々は今件には関係が無く(とはいえ、利用者から反発を食らえば「株主価値の向上」には反することになるので無関係といえなくもない)、純粋に株式数によるパワーゲームでしかない。語られている科白にしても、行動と言及されている内容が食い違うものだとしても「あの時はそう思っていたが今は変わった」「状況が変化した」「こういう考え方、とらえ方もできる」と言い訳すればどうにでもなるレベルのもので、強制力のある縛りは存在しない。要は「金(数、株数)さえあれば強権力をぶん回せる」という好例だといえよう。

それが正しいかどうかは別として。

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