有効策かそれとも「魔女裁判」「言論弾圧」か……バーチャル社会の弊害から子供を守る研究会設立

2006年04月07日 06:30

[このページ(Sankei Webなど)は掲載が終了しています]によると、インターネットや雑誌、ゲームなどの俗に言う「仮想現実(バーチャル)」社会を通じて、子供が暴力などに関する情報に簡単に接して悪影響を受けている可能性があるとし、【警察庁】は4月6日、「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」を設置することを決め、4月10日に初会合を開くことになった。

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記事によればバーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」は警察庁生活安全局に事務局がおかれ、ジャーナリストの江川紹子氏や京都医療少年院の精神科医、岡田尊司氏、首都大学東京の前田雅英・都市教養学部長ら心理学、教育、法律の専門家ら15人が委員を務めるという。今後月一程度の会合の中で、

・子供の性を対象とするアニメ
・ネットに氾濫(はんらん)する性・暴力情報
・子供のネット、ゲーム依存


などの問題について検討、第一線のアニメ製作者らをゲスト解説者に招いて意見を聞き、今夏をめどに論点を整理して問題提起を行うという。アニメ方面については法律問題についても、ネットや携帯電話の有害情報では将来的な規制のあり方を、コンピュータゲームの子どもへの影響については対応策をも打ち出す予定だという。

論点となっている点は非常に重要であり論議すべき内容ではあるが、「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」での決定が今後の行政側の指針の大黒柱的になるような(というよりそうするためのお膳立てのような)雰囲気があり、気になるところ。半年足らず、しかも15人という少人数での委員会の決定でどれだけの事実が把握・認識でき、ピントはずれでない問題提起ができるのか疑問である。

脳内汚染イメージネットもゲームも、指摘されているような「有害情報」による弊害があるのは事実。だが、それはその媒体が世間一般に便利で好まれている媒体であるからに他ならない。いわば「両刃の剣」のようなものであって、その一面だけをもって敵対視し規制の網をかけるような動きを見せるのはいかがなものだろう。

参加委員の全リストがないので断定はできないが、例えば前田雅英氏は法律系の専門家だが、岡田尊司氏はゲームやネットを「麻薬」と断じる著書『脳内汚染』にもあるように、バリバリのゲーム・ネット否定派であることがうかがえる(『アマゾンによる著書一覧』)。どこぞの国のBSE問題討議委員会のように「はじめに結論ありき」な委員会の香りがし、非常に不安でならない。

いまだに「テレビは有害であるからこの世からテレビそのものを全廃すべきである」「化石燃料を用いた交通機関は環境汚染や文化破壊をもたらすので自動車飛行機船舶はすべて廃棄すべきだ」と主張する方々もおられる。それと同じような、あるいは「ゲーム脳」のようなピント外れで偏見がかいまみれる主張を「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」が提起しなければ良いのだが。


(最終更新:2013/09/19)

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