「日本健康増進希望者は1億人」、一億総健康願望時代で健康食品が引っ張りだこ
2006年04月04日 07:00
【ブルームバーグ】において医薬品卸最大手【メディセオ・パルタック(7459)】の熊倉貞武社長の談として、「日本における治療人口は900万人、健康管理人口は1600万人、そして健康増進を望む健常者は1億人」という科白が紹介されている。治療に主眼がおかれていた一般用医薬品も、健康増進志向にあわせ、予防や健康増進など、俗に言う「ウェルネス」用途での視野が広がっているという。
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日本における一般用医薬品の市場は年々縮小しつつあるが、一方で健康増進のニーズは高まるばかり。医薬品のセールスには知名度が重要な要素となるので宣伝広告費をかけるのは必要不可欠だが、セールスそのものが縮小しており、広告費の負担が重くなっているのが現状だという。例えば大衆薬業界では第二位の【武田薬品工業(4502)】は年間事業規模は520億円であるが、同社の主力商品のアリナミン錠剤は160億円、ベンザは80億円ほどの年商となっている。これらの商品のCMを止めてしまうとブランド力が減り、セールスダウンにもつながるのではないかという恐れから、今現在行っている広告展開を止められないのだという(全国規模のテレビ広告作成には1商品あたり5000~6000万円ほどの制作費が必要なそうな)。
一方、資本力にモノを言わせて有名ブランドそのものを買収し、セールスアップにつなげる手法もある。例として【大正製薬(4535)】の便秘薬「コーラック」の商標・販売権獲得があげられている。安くはない買い物だったが、有効なキャッチコピー(例えば「ピンクの小粒、コーラック♪」)を使いたくみに展開することで、セールスは伸び、シェア拡大にも大きく貢献したという。
一方、事業買収で一般医薬品事業の展開を進めているのが[ライオン(4912)]。【中外製薬(4519)】の一般医薬品事業を買収し、「グロンサン」や「バルサン」を得て、ライオンのこれまでのマーケティング戦略も活用することで、大衆薬部門の売り上げを大いに伸ばしたという。【セブンイレブン(3382)】が栄養ドリンク剤の推奨ブランドに、グロンサンを加えたことも大きなプラス要因となった(現在でははずされている)。
このようにあれこれと手を変え品を変えて縮小傾向にある一般用医薬品市場への対応策を採る一方、大手に限らず中小企業にいたるまで、大きく伸びている健康食品市場に注目しているのも確か。記事では
「少子高齢化の進展に加え、いわゆる団塊世代の集団退職に伴い、元気なシルバー層が増えると予想される。日本政府のバイオテクノロジー戦略大綱(02年12月)によると、日本の健康志向食品の市場規模は2010年度には3兆2000億円になる見通しで、00年度実績の1兆3000億円から年率25%で伸びるとみている」
とし、日本の健康志向食品の先行きがいかに明るいかを説明している。実際、「アンチ・エイジング(抗老化)」や「デトックス(体からの毒消し)」などが声高に叫ばれるようになり、テレビ番組でたびたび特集が組まれるようになる。「コエンザイムQ10」で世界トップの【カネカ(4118)】は、営業利益・連結純利益共に大幅な伸びを示している。
記事にはほかにも数々の例が挙げられており、一般大衆医薬品メーカーが市場のニーズに迎合する形で「ヘルスキュア(治療)」から「ウェルネス(健康増進)」に軸足を移しつつあると結論付けている。そして健康食品こそが競争の主戦場となり、その戦場で勝ち抜くためには「生活者の立場に立って、自社商品を見つめなおすことが必要」としている。
「死んでも健康になる」という冗談めいた科白があったが、指摘通り健康食品は日に日に市場にあふれつつあるのは肌身をもって感じるところがある。厚生労働省から許可を受けた保険の効果を表示できる商品「トクホ(特定保健用食品)」が注目を集めるようになったのもここ数年の間に、だろう。
当方(不破)自身もいまだに通院・療養中であることもあり、先日自分の病気のネフローゼ症候群をメインとした医療情報サイト[Garbageclinic.com]を立ち上げたが、そこの運営でもつくづく「健康食品の数が増えたな」と感じるところがある。自分の体の具合がもう少しよくなって、トクホをはじめとする健康食品を利用することができるようになったら、これらの食品情報を取り扱うサイトを立ち上げてニーズに応えても良いかな、とも考えるようになったのも事実だ。
「食育」という言葉とあわせ、口にするものへの気遣いと健康への配慮が今まで以上に注目されるようになった現在、健康食品への注目はますます高まることは間違いないだろう。
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