GDC2006で「ロードブリティッシュ」「Sage Sundi」氏らネットゲームの2雄による講演開催
2006年03月27日 06:00
【「レボリューションはメガドライブとPCエンジンのゲームがダウンロードして遊べる」任天堂岩田社長語る】をはじめさまざまなゲーム業界における最新情報が発せられた【The Game Developers Conference 2006】では、ネットゲーム業界の重鎮たちによる数々の講演も行われ、興味深い発言が相次いだ。GAME Watchにおいて、その中でも『ウルティマ オンライン』などで著名なロード・ブリティッシュ公ことRichard Garriot(リチャード・ギャリオット)氏による最新作『Tabula Rasa』に関する講演と、同じく『ウルティマ オンライン』や『ファイナルファンタジーXI』における運営面で名を知られているSage Sundi氏が行ったネットワークゲームに関する講演が掲載されている。この2件は非常に興味深い内容を含んでいる。
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かつて「ディズニーランドのような楽しさの演出」というコンセプトで『Tabula Rasa』を制作しているとコメントしていたリチャード・ギャリオット氏による講演についての記事(【Richard Garriot氏が語る「Tabula Rasa」のデザイン ベテランの前に現われた「陥りやすい罠」と、そこからの脱出】)では、ギャリオット氏が、ゲーム制作サイドが陥りやすいワナ、ハードルに直面し、それを乗り越えたことが語られている。
詳細は参照記事で確認してほしいが、ギャリオット氏は「開発現場における責任の取り方やコミュニケーションの問題(カルチャーギャップ)」や、開発元である韓国での「センスの違い」、さらには技術的な問題に直面し、『Tabula Rasa』制作過程において何度となく「やり直し」を強いられたそうだ。当初語られていた内容とはかなり違った方向に向いてしまったような感はあるが、ともあれリスタート後の『Tabula Rasa』の制作は順調に進んでいるようである。
一方Sage Sundi氏による『ファイナルファンタジーXI』をテーマにしたオンラインネットワークゲームにおけるコミュニティ戦略について語られた講演の記事(【Sage Sundi氏が語るスクウェア・エニックスのグローバルMMO戦略「Creating a Global MMO: Balancing Cultures and Platforms in FINAL FANTASY XI」】)では、当人曰く「基本的に裏方」の氏がコミュニティマネジメントを中心にネットワークゲームの戦略について語られた内容が記載されている。
こちらも詳細は参照元記事を確認してほしいが、【スクウェア・エニックス(9684)】の戦略として、多地域・多言語・多プラットフォームによるクロス展開と、「新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの満足度の維持」が重要であることが語られている。また、同氏の専門分野でもあるコミュニティマネジメントについては、トライアングル理論とでも呼ぶべき持論を展開した。元記事のまとめ方が絶妙なのでそのまま引用する。
Sundi氏は、会員数を維持する上で重要な施策となるコミュニティマネジメントについて、コア層からライト層まで下に行くほど人口が多くなる三角形の図を示し、実はその中にギルドやファンサイトなどを軸とした無数の小さいコミュニティの三角形があり、それぞれのコミュニティの頂点にいる人物がコミュニティ全体の方向性を左右しているというユニークな見解を示した。
つまり、コミュニティをマネジメントする上で重要になるのは、小コミュニティのトップに位置するリーダーの心を掴むべきであり、個々のコミュニティを意識した対策が必要になるという考え方である。そのための施策としてSundi氏は、コミュニティサイトへの接触、インゲームイベントの実施、開発とユーザーのコミュニケーションチャネルの創出などを挙げた。
最近俗に言うブログ界などで語られることの多い「αブログ論」や「一次・二次情報」などと共通する部分が多く、非常に興味深い内容といえる。ネットコミュニティもブログ・ネット界における情報伝達構造も、要は「インターネットを経由した情報の伝達」という視点では同じであり、結果的に構造も似たようなものになりうるという好例であろう。
また、『ファイナルファンタジーXI』そのものについても、現在のデータとして「アクティブユーザー数約50万人」「一日区切りでのログイン数は20万から30万人」「同時接続者数は13万から15万人」「最高同時接続数は2005年6月24日に記録した19万4418人」「キャラクタ数は160万キャラクタ」「日本と欧米のユーザー比率は55対45」「PS2とWindowsのユーザー比率は日本が2対1なのに対し、欧米は1対2」「1アカウントあたりのキャラクタ数は日本が3人、欧米は1.4人」といった、非常に興味深いデータも公開されたという。会場で公開されたレジュメデータが是非とも欲しいところだ。
海外、特にアメリカではこのようなイベントや集会が毎年何度も開かれ、業界内でたゆまない切磋琢磨の場が用意されているが、日本ではあまり無いというのが実情(似たようなコンセプト・規模のものといえばせいぜい年一度の東京ゲームショウくらいか)。日本でも今回のような有意義な講演が相次ぐようなイベントが開催されることを切に願わずにはいられない。
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